不動産投資を始めるのに必要な資金額は?

「会社員が不動産投資を始めるには、最低いくらの自己資金が必要か?」という質問をよくいただきます。しかし、自己資金の額よりも重要なのは、「とにかく早く始める」ことです。
日本には多くの金融機関があり、ノンバンクを含め、融資に積極的な姿勢を持っています。会社員としての社会的信用があれば、融資を受けることは十分に可能です。
「融資を活用して購入する」という行動をとり、時間を味方につけること。これが25年経ったとき、行動しなかった人との間に決定的な資産の差を生むことになります。
貯金・株・不動産の理想的なポートフォリオは?
「貯金・株・不動産の理想的な比率は?」という問いに対しては、自身の生活の「下支え」がどこにあるかによるとお答えしています。
たとえば、ご実家に資産がある、あるいは困ったときに帰れる場所があるといったセーフティネットをお持ちの方は、アグレッシブにリスクを取っても良いでしょう。逆に、まったく後ろ盾がない状態であれば、ある程度の手元流動性(現預金)を確保しておく必要があります。
私の場合、資産の95%は現金以外です。有価証券など換金性の高い資産はありますが、純粋な意味での預金はほとんど持たず、すべて何らかの投資に回しています。
そのなかでも、やはり不動産の比率が最大です。たとえば、株式を10億円分保有するというのは、ボラティリティの大きさから、精神的な負担が非常に大きくなります。わずか1%の変動で1,000万円、3%なら3,000万円が動くわけですから、気が休まりません。
しかし、不動産で資産を持つことに対しては、不思議と恐怖を感じません。これは不動産が持つ価格の安定性と、実物資産としての強みゆえでしょう。
買ってはいけない物件を見極めるコツとは?
物件選びで最も重要なのは、賃貸需要が不安定なものを避けることです。
不動産投資の大前提は「家賃収入があること」です。たとえ表面利回りが10%あったとしても、入居者がいなければ、その瞬間に実質利回りは0%になります。融資を受けて投資している場合、家賃収入が途絶えれば返済が滞るリスクに直結します。
ですから、初心者が第一に考えるべきは「キャッシュフローの確実性」です。
利回りの高さだけに目を奪われてはいけません。市場全体の利回りが5%の時に7%の物件があれば魅力的ですが、金融危機直後などで相場が10%の時に7%では魅力がありません。利回りの絶対値に意味はなく、その時々の市況と比較してどうか、そして何より「コンスタントに家賃が入ってくるか」が重要です。
見極めるコツとしては、自分自身が「ユーザーとしての視点」を持つことです。
不動産投資は中古の安い物件から挑戦するべきか?

「空室リスクが怖いので、まずは中古の安い物件から始めるべきか?」という質問も多いですが、新築か中古かという点よりも、先ほど申し上げた「賃貸需要があるかどうか」が本質です。
自分がユーザーとして「ここなら借りたい」「住みたい」と思えるかどうか。その感覚さえ外さなければ、大きく失敗する可能性は低くなります。実際に現地へ足を運び、「ここはいいな」と肌で感じる感覚はとても大切です。
逆に、初心者が避けたほうがよいのはリゾート物件です。季節変動が激しすぎます。また流動性が低く、売りたいときにすぐに売れません。投資の第一歩としてリゾート物件を選ぶのは、避けたほうが無難でしょう。
一般人はネットからどのように物件を探せばいいのか?
物件探しにおいて、プロだけの未公開情報があると思われがちですが、実はプロも大半はネット経由で購入しており、情報の非対称性はほとんどありません。 ネットで探す際のポイントとして、私は「仲介会社の営業力が弱そうな物件」を狙い目にしています。
たとえば、売り主が不動産の素人で、駅前の営業活動に消極的な不動産会社に依頼しているようなケースです。営業日が少なかったり、問い合わせへの対応が遅かったりする会社が扱っている物件は、ライバルが少なくチャンスといえます。
また、物件は吉祥寺にあるのに、仲介会社が千葉の船橋にあるといった「エリア違い」のケースも狙い目です。地元の相場感に疎く、適切な値付けができていない可能性があるからです。
逆に、写真が大量に掲載され、詳細な説明がある「完璧なページ」を見ると、私は「これはプロがしっかり高く売ろうとしているな」と感じ、安く買える見込みがないと判断します。
初心者は写真が多いほうが安心するかもしれませんが、私は「写真が少なくて情報が不十分な物件」のほうに、掘り出し物が眠っている可能性を感じるのです。
不動産価格が下落した際の損切りの基準はどこに置くか?

「不動産価格が下落したら売るべきか、損切りの基準は?」という質問ですが、基本的に不動産投資で損をしている人は少ないはずです。なぜなら、相場が悪ければ「売らなければいい」からです。
家賃収入が安定して入っていれば、売却価格が下がっていても生活には困りません。含み損があっても、それを確定させなければいいだけの話です。リーマン・ショックの時もそうでしたが、不況時に売り急いで損をする必要はありません。キャッシュフローを得続けながら、嵐が過ぎるのを待てばいいのです。
では逆に「いつ売るのか?」ですが、私は「売らずに持ち続ける」のが基本戦略だと考えています。
米国などでは、インフレとともに不動産価格も家賃も上昇し続けるのが一般的です。日本もグローバルな視点で見れば、需要の底堅いエリアの不動産価値はジワジワと上がっていきます。
私自身、過去に何度か物件を売却しましたが、今では「売らなければよかった」と後悔しているものが大半です。たとえば、5億円で買った物件が10億円になったとします。10億円で売却しても、借入金の返済や約30%の税金を支払うと、手元に残る現金は3億5,000万円程度になってしまいます。
売却前は10億円の資産として年間3,000万~4,000万円のキャッシュフローを生んでいたのに、売却後の3億5,000万円の現金で、同等の利回りを生む投資先を見つけるのは至難の業です。
それならば、売らずに持ち続けて家賃を受け取り、「今売れば10億円になる資産を持っている」という心の余裕を持っていたほうが、資産形成としては正解ではないでしょうか。
初心者はどのような投資から始めるべきか?
最後に、資産形成全般についてお話しします。変動を嫌い、コツコツ確実に増やしたいのであれば、現在は金利がつきますから国債(債券)が良いでしょう。
しかし、私のように「それでは刺激が足りない」と感じる方は、やはり株や不動産がおすすめです。株の醍醐味は価格が2倍、3倍になるキャピタルゲインにあり、不動産はレバレッジを効かせてキャッシュフローを作っていく楽しさがあります。
もし「損をしたときの心の痛みが耐えられない」という性格であれば、日経平均やS&P500などのインデックス投資がよいでしょう。自分が損をしている時は周りも損をしているので、「まあいいか」と割り切れるからです。個別株で自分だけが損をするのは、精神的に辛いものです。
大切なのは、「人生のゴールをどこに設定するか」です。自分自身を「目的を持たざるを得ない立場」に置き、そこに向かって資産形成をしていくことが、結局は自分自身の幸せにつながるのではないかと考えています。
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株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

