年代によって資産形成の戦略は変えるべきでしょうか?

20代、30代、40代と、年代に応じて戦略を変えるべきかという問いに対して、答えは間違いなく「イエス」です。もちろん家庭環境の違いも大きいですが、もうひとつ重要な要素が「健康」で、体力があること、無理が利くこと、そして失敗してもやり直しが利くこと――これらを備えているという意味で、20代と40代ではリスクの許容度が根本的に違います。「健康であること」自体が最大の財産であり、まずはその土台を確認できて初めて、アグレッシブにリスクを取れるようになります。
もし体力に不安があったり、持病を抱えていたりするのであれば、当然それらを加味した保守的な運用を検討せざるを得ません。知的労働であれ肉体労働であれ、将来の労働から得られるリターンの見込みは、リスクテイクの判断と常に均衡を保っているからです。「体が資本」という言葉は、資産形成の世界においても、これ以上ないほど的を射た真理なのです。
不動産投資を始める人と、一歩踏み出せない人の違いは何ですか?
新しいことに一歩踏み出す人と、そうでない人。その差は、最初はほんのわずかな境界線かもしれません。しかし、この「コンフォートゾーン(居心地のよい場所)から少し離れたことに挑戦する」という姿勢の有無は、たとえば25年という歳月を経て、決定的な差となって現れます。
その差とは、単なる資産額の多寡だけではありません。「人間としての面白み」の差です。 リスクを取らず、変化のない環境にとどまり続けた人は、50歳になったときに、失礼ながら「面白みのない人」になってしまっていることが多い。
一方で、リスクを取って挑戦し続けてきた人は、住む場所も、仕事の内容も、関わる人も常に変化しています。「あいつは今、あんなところでこんな面白い仕事をしているらしい」と噂されるような人は、本人も人生を謳歌しているはずです。
健康なうちに「アーリーリタイア」して自由に生きるのは正解?
「若いうちに資産を築いて、早く引退したい」という考えを持つ人もいるかもしれませんが、私はそれは大きな間違いだと思います。もしリタイアしてやることがなくなれば、人は「人生の迷子」になります。目的もなくただ生き続けるのは、苦痛でしかありません。
私は、人間は適度に過酷な状況に自分を追い込んだほうが、結果的には幸せになれると考えています。 もちろん、無意味に自分を痛めつける必要はありません。しかし、経営者が「売上1兆円を目指す」といった一見無謀な目標を掲げるのは、単なる数字の追求というより、自分を飽きさせないための、そして充実感を得るための「装置」としての側面があるのではないでしょうか。
結局のところ、目標というのは精神的な持ちようの話です。1兆円を達成しても、次は2兆円、10兆円と数字を追うだけでは限界があります。それよりも「人としてどう生きるか」「人とどう接するか」。こうした深い部分に根ざした目標を持って生きている人のほうが、人生の充実は大きいはずです。
木本さんがあえて厳しい環境に身を置き続ける理由は何ですか?

私がなぜゴールドマン・サックス(GS)のような厳しい環境に身を置き、今も経営者として走り続けているのか。最大のモチベーションは、「面白い人たちの一員でいたい」という純粋な気持ちです。
私がGSで所属していたチームは、社内でも特に選りすぐりの精鋭が集まる場所でした。その一員として認められたい、役に立ちたい、トップクラスの人たちと同等に仕事をしたいという思いが、私を突き動かしてきました。
当時の仲間たちとは、チームを離れた今でも交流があります。彼らと会うとき、私は常に「最近の木本はこんな面白いことをやっているのか」と思われたい。「昔から変わっていたけれど、今も相変わらず突き抜けているね」と言い合えることが、私にとって最高の褒め言葉です。 刺激的な仲間と同じ地平で語り合える自分でいたい。そのためには、自分自身が成長し、変化し続けていなければなりません。そのコミュニティの一員であり続けたいという欲求こそが、私の原動力なのです。
もし今、手元に100万円あったら何に投資しますか?
視聴者の方の目線で、もし今100万円あるとしたらどうするか。まず、100万円では不動産投資の原資としては十分ではありません。ですから、私なら「10倍の成長が見込める個別株」を買うでしょう。
よく「100万円あるなら自己投資に回すべきだ」という模範解答を耳にします。しかし、私は「真の自己投資に、大きなお金はかからない」と考えています。 本当に成長しようと思えば、本を読んだり、誰かに会いに行ったり、あるいはインターネット上のツールを活用したりと、いくらでも方法はあります。それらには多額の資金は必要ありません。
ですから、100万円という原資は有価証券などで着実に運用し、自分を成長させるための自己投資は、自らの努力と工夫で「コストをかけずに」行う。これが最も効率的で賢い戦略ではないでしょうか。
ちなみに、私自身の現在の投資は「会社経営」そのものです。会社の総資産約600億円、自己資本約300億円をどう事業に配分(アロケート)していくか。これが私にとっての最大かつ最高の投資です。個人的な物欲は、年齢とともに驚くほどなくなってしまいました。今、個人的に買いたいものは何もありません。
現代人が「人生の目標」を見失わずに生きるにはどうすればいい?

今の時代、目標を見失って悩んでいる人は多いと思います。かつての戦後復興期のように「生きるために稼ぐ、豊かになる」といった社会共通の目的が失われ、自由になった一方で、多くの人が「何のために生きるか」という実存的な悩みに直面しています。
実は、「自由すぎることは、時に不幸を招く」のではないでしょうか。 無理にでも目的を持っている人のほうが、人生は充実します。自分を「目的を持たざるを得ない立場」に追い込むことが、結局は幸せにつながるのです。
具体例を挙げると、私の会社の経営企画に、二人の子供がいる男性がいます。彼は「育児は想像以上に過酷です、自分の時間なんてまったくありません」と笑いながら言います。しかし、彼には「自分が稼がなければ家族が困る」という強烈で明確な目的があります。一定の財産を築かなければならない、走り続けなければならないという切実な「制約」があるからこそ、彼の人生は充実し、輪郭がはっきりしているのです。
「年収はまだ低いけれど、どうしてもこのマンションを買いたい」と、高くそびえ立つ目標に向かっている人も、傍から見れば大変そうですが、本人はとても幸せでしょう。人間は、適度な制約や重荷があるからこそ、生きるモチベーションを維持できる生き物なのです。
なぜ会社は、「成長」と「変化」を続けなければならない?
最後に、私が今年学んだなかで最も感銘を受けた話を共有します。米国のある大手M&AアドバイザリーのCEOが、日本の経営者たちにこう問いかけました。「なぜ、会社は成長し続けなければならないのでしょうか?」と。
「利益が出ていて、従業員に給料が払えているなら、現状維持でもいいのではないか」。そう考える人もいるでしょう。しかし、彼の答えは明快でした。「成長がないところに、面白い人は集まらないから」です。
賢くて優秀な人、人間的に面白い人というのは、常に「変化」と「成長」がある場所に惹かれます。たとえ給料が安定していても、10年間まったく同じ仕事を繰り返したいと願う優秀な人はいません。経営者が優秀な仲間を集めたいと願うなら、単に儲かっているだけでは不十分で、常に会社が変化し、成長し続けている姿を示さなければならないのです。
私自身、かつて経営再建をしていた時期に、優秀な部下を失った経験があります。会社の状態がよくなり、黒字化して安定したタイミングで、彼は「一番危ない時期は終わったので、僕は去ります」と辞めてしまいました。
そのとき、私は痛感しました。面白い人たちと一緒に仕事をしたい、彼らにとどまってほしいと願うなら、現状に満足してはいけないのだと。勝つことは大前提ですが、常に次の成長、次の変化を追い求めなければ、組織は魅力的な場所であり続けられません。これからも変化を恐れず、挑戦し続けていきたいと考えています。
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株式会社アーキテクト・ディベロッパー
代表取締役社長 木本 啓紀
ゴールドマン・サックス証券株式会社アジア・スペシャル・シチュエーションズ・グループに18年間在籍。ローン債権、債券、不動産、エクイティ、証券化商品、オルタナティブなどあらゆるプロダクトを対象とした投資業務を経験。その後、ソフトバンクグループ株式会社に転じ引き続き投資業務に従事。2019年9月 当社取締役に就任。その後、ソフトバンクグループを退職し、2021年9月 代表取締役CEOを経て、2025年7月代表取締役社長に就任、現在に至る。

