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新卒2年目の窮地
新卒2年目・23歳の会社員Bさんも、住民税が課されるタイミングで1万円ほど給与が減少し、生活が厳しくなったと話す。奨学金の返済が始まったばかりで、生活費を削りながらやりくりする日々だ。
「とにかく節約して暮らさなきゃという思考になってしまい、飲み会の誘いも断ることが増えました。周りと距離ができた感じがして、ちょっと居心地が悪いです……。正直、もっと給料が高い会社に転職することも考えています」
手取りの減少と奨学金返済という“ダブルパンチ”が、若者の可処分所得を圧迫している。将来への希望を持って社会に出た彼らが、報われない現実に直面しているのだ。
親世代とのギャップ
現在、日本の大学生のおよそ3人に1人が奨学金を利用している。日本学生支援機構のデータによれば、令和5年3月に貸与を終了した新社会人の平均借入額は約333万円。返済期間は平均で17年にもおよぶ。
しかし、奨学金に対するいまの20代の親世代の認識には大きなギャップがある。「奨学金を借りている人はごく一部」「奨学金=学費の一部を一時的に借りる軽い負担」と考える親世代の意識と、実際には長期にわたる高額な返済負担があるという点に大きなズレがある。
その背景には、親世代が若いころに比べて、大学の学費が大幅に上昇しているという事実がある。国立大学の授業料はこの40年で約2.4倍、私立大学でも約1.8倍にまで増加している。加えて、物価上昇や賃金の伸び悩み、大卒前提の採用構造などが複雑に絡み合い、奨学金に頼らざるを得ない状況が続いている。
スキルや経験といった人的資本の乏しい20代は、本来であれば自己投資に力を入れるべき時期だ。しかし、奨学金返済に追われる現実は、それらを困難にしている。
・スキルアップのための講座や書籍を購入できない
・起業やキャリアチェンジといった挑戦に踏み出せない
こうした制約は、結婚・出産といったライフイベントの遅れにもつながる。また、将来の選択肢を狭める要因となり、「挑戦できない自分」を作り出してしまう。教育を受けるために借りた奨学金が、結果として可能性を制限する――この構造に疑問を持たずにはいられない。