資産管理会社・マイクロ法人を活用するメリット
ここでは、資産管理会社やマイクロ法人を活用する主なメリットとして、節税・社会保険料の軽減・損失の繰り越し・相続対策の4つの視点から、それぞれの具体的な効果について解説します。
所得分散と経費計上で節税できる
資産管理会社やマイクロ法人を設立する最大の魅力の一つが、節税効果です。
日本では累進課税を採用しているため、1人が多くの所得を得た場合、その分の税率が高くなります。そこで、法人を利用し家族を会社の役員として登記することで、役員報酬という形で所得を分散させることが可能となり、1人に集中していた高額な所得税や住民税の負担を軽減することができるようになります。
また、個人で事業に関する支出を経費計上するよりも、法人で計上したほうが、経費として認められている範囲が広くなります。所得は売上から経費を差し引いた額なので、できるだけ多くの経費を計上することにより、課税所得を圧縮することも可能です。
ただし、何でも経費にできるわけではなく、実際に業務と関連性がある支出でなければなりません。また、節税目的があまりに露骨だと、税務署による税務調査の対象になる可能性もあります。そのため、正しいルールに基づいた運用が求められます。
社会保険料の負担を軽減できる
法人化により、社会保険料の負担を抑えることも可能になります。
特に個人事業主から法人化することで、役員報酬の設定や従業員の加入有無を調整できるようになる点が大きなポイントです。例えば、役員報酬をあえて低く設定することで厚生年金や健康保険などの保険料を最小限に抑えることができます。
ただし、法令改正等によって条件が変わることもあるため、事前に社労士などの専門家に相談するようにしましょう。
損失を最大10年にわたって繰り越せる
資産管理会社やマイクロ法人を活用することで、法人として計上した損失を翌年度以降に繰り越すことが可能になります。これは「繰越欠損金控除」と呼ばれる制度で、法人税法上、最大10年間にわたって翌年以降の利益から差し引くことが認められています。
この仕組みにより、例えば初年度に修繕費や減価償却費が多く発生して赤字となった場合でも、その赤字分を翌年度の黒字と相殺できるため、税金の支払いを大幅に抑えることができます。個人の不動産投資では、損失の繰り越しが3年までに限られているため、法人化することの大きなメリットの一つといえます。
もっとも、税務申告においては繰越欠損金の記載漏れや形式ミスがあると控除が認められないこともあるため、専門家によるサポートなどを受けながら正確に申告することが重要です。
相続対策ができる
資産管理会社やマイクロ法人は、相続対策としても非常に有効です。個人で不動産を所有している場合、その物件ごとに相続人で分割する必要があり、分け方によっては揉め事の原因になる場合があります。
しかし、法人名義で不動産を所有していれば、相続時にはその不動産を直接分けるのではなく、会社の「株式」を分けることで対応が可能になります。株式であれば、相続人の人数や相続割合に応じて柔軟に分割できるため、相続手続きがスムーズに進むうえ、トラブルの回避にもつながります。
また、個人名義の不動産であれば路線価や倍率方式で評価されますが、法人所有の不動産は会社の純資産価額に反映され、自社株式の評価を通じて間接的に評価されるため、法人化することで資産評価額を抑え、相続税の節税効果が期待できる場合もあります。
