最近なにかと話題の「残価設定型クレジット(通称:残クレ)」。実のところ、仕組みをきちんと理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。そこで今回、高級車に憧れを抱く41歳サラリーマンの事例を通して、「残クレ」の仕組みと注意点をみていきましょう。FP Office株式会社の宮本誠之FPが解説します。※車両価格や設定金利、登場人物の情報等は一部変更しています。
悔やんでいます…「残クレ」で念願のアルファードを手に入れた年収550万円・41歳サラリーマンの末路【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

Aさんが購入を決心した、ディーラーからの「1通のメール」

ある日、メールフォルダをチェックすると、ディーラーから1通のダイレクトメールが届いていました。

 

目に飛び込んできたのは、“月々たった4万円で、アルファードがあなたのものに!”という魅力的な文言。車両価格700万円の高級車が、頭金100万円を支払えば月々4万円、しかも金利1.5%込みで乗れるといいます。

 

Aさんはすぐにディーラーへ向かい、担当者からの説明もそこそこに、契約書にサインしたのでした。

購入者の5人に1人が利用…残クレの実態

2024年の国内新車販売台数約340万台のうち、残クレ契約は68万台と、約20%にあたります。高額なファミリーカーに限っていえば、残クレ契約の割合は40〜50%にのぼります(2024年自動車販売協会連合会調べ)。

 

そもそも「残クレ(残価設定型クレジット)」とは、車両価格の一部を将来の「残価」として据え置き、その残価を除いた金額を分割で支払う方式のこと。これにより、毎月の支払額を抑えることが可能です。

 

一般的なローンと比べて月々の負担が軽くなるため「ワンランク上の車に乗りたい」「まとまった頭金がないけど新車に乗りたい」といった人に好まれています。

 

また、契約満了時には「買い取り」「返却」「再分割」といった選択肢があることから、ライフスタイルの変化に合わせて車を乗り換えやすいというメリットもあります。

 

一方、残クレには見過ごせないデメリットが潜んでいます。最大の注意点は、「残価」が設定されているという点。契約満了時に残価を支払う必要があるため、再度ローンを組むか、一括で支払うか、または車を手放すかの選択を迫られます。

 

また、5年後の中古車市場価格が設定された残価を大きく下回っていた場合「市場価格調整」が適用され、そのマイナス分を請求されるリスクにも注意が必要です。

 

Aさんのケースでいえば、5年後には350万円の残価が待っています。この350万円を支払うか、車を返却するか、あるいは再度残価設定ローンを組むか、という選択を迫られるわけです。

 

さらに、残クレは走行距離や車の状態に制限が設けられていることが多く、これらを守れない場合は追加料金が発生する可能性があります。

 

たとえば、規定の走行距離を超過したり車体に傷や凹みがあったりすると、査定額が下がり、その分を負担しなければなりません。

 

また、返却時にはクリーニング費用や手数料など、ケースによっては数万円〜十数万円の追加コストがかかる場合もあります。