人生の終盤戦。そこで大きなテーマになるのが「住まいのカタチ」。徐々にからだの自由がきかなくなっていくなか、安心・安全に暮らしていくためには、どのようなスタイルがいいのか……その答えは一人ひとり違うでしょう。また一度決めた答えが、ファイナルアンサーとも限らないようです。

「これで安泰だ」…自宅を売り、シニア向けマンションへ

高橋健一さん(75歳・仮名)と妻の良子さん(75歳・仮名)は、長年連れ添った夫婦です。大手企業を勤め上げた健一さんの退職後、夫婦は穏やかな日々を送っていました。年金は月におよそ38万円。幸いにも、経済的な不安は特にありませんでした。

 

そんな夫婦の唯一の悩み――この家に住み続けるかどうか。結婚してから郊外に構えた一戸建て。定期的に屋根や壁の補修をしているものの、築45年を迎え、この先、安心して住み続けるなら建て替えを検討したほうがいいとアドバイスされたといいます。

 

とはいえ、現在75歳。損得ではないかもしれませんが、年齢を考えると、建て替えに対しては躊躇してしまいます。そんな問題に有力な解決策を示してくれたのが、一人息子の雄大さん(45歳・仮名)でした。有名大学を卒業後、有名企業に勤務。年収1,000万円を超える、世間ではエリートと呼ばれる人でした。

 

「家を建て直すくらいなら、いっそのこと、家を売って、シニア向けのマンションを買ったら?」

 

高齢者向けの住まいとして、近年増加しているシニア向け分譲マンション。入居条件に明確な規定はありませんが、自立していることが条件となっているマンションも。物件価格は数千万〜数億円と、一般的な分譲マンションと同様幅広く、月額費用は6万~10万円程度と、付帯するサービス等で大きく変わります。部屋が広く共用部が充実。所有権を得るので、相続ができるメリットも。一方で初期投資額が大きく、毎年固定資産税がかかる点も注意が必要です。

 

高齢者が入居することを全体にした造りは住み心地がよく、医療サービスとの連携を売りとしているところも多く、一般のマンションよりも安心感がある点も見逃せません。

 

高橋さん夫婦は、プライベートスパや大浴場、カラオケルーム、アクティビティルームと、共用施設が充実した高級シニア向けマンションの購入を決断。入居時の費用は5,500万円、月額費用は月10万円ほど。最終的には自宅を売却して完済しました。

 

コンシェルジュが常駐し、食事はダイニングで提供。同世代の友人もでき、談笑も弾む――まさに、思い描いていた理想の老後。健一さんは「これで私たちの老後は安泰だ」と、満足げに良子さんに語りかけていたといいます。