見栄や憧れから、収入に見合わない暮らしをしてしまうとじわじわと首が締まっていきます。しかし「成功者の象徴」タワーマンションにはそれだけの魅力があるようで……。本記事ではAさん夫妻の事例とともに、高所得者が陥りがちな住宅ローン計画の落とし穴について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
すべては白金のタワマンを守るため…「手取り月115万円」一見裕福な暮らしも、実は「住宅ローン破綻」の衝撃。30代パワーカップルに銀行から〈身震いする通知〉が届くまで 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

高所得なのに家計は赤字寸前、貯金ができない

ある日、月末のクレジットカード明細を確認していたAさん夫妻は顔を見合わせました「こんなに働いてるのに、どうしてお金が残らないんだろう?」 。

 

世帯年収2,000万円……。一般的に高所得層のはずです。にもかかわらず、貯金は増えるどころか、家計簿は赤字ぎりぎり。その原因は、膨らみすぎた「見えない固定費」でした。 

『いける』と思ったのに…

「年収1,000万円を超えていれば、1億円くらいのローンは通りますよ」と不動産営業マンにいわれ、ペアローンで1億1,000万円を借入。金利の低さもあって、心理的ハードルはそれほど高くなかったといいます。実際、住宅ローン審査はすんなり通りました。

 

見えない固定費

「ローンのシミュレーションで月35万円と聞いて『いける』と。でも、管理費や駐車場代を足すと月50万を超えていたんです。この“見えない固定費”が、ボディブローのように効いてきました」

 

実際、白金のタワーマンションは維持費が高く、管理費と修繕積立金で月8万円以上。駐車場代は月8万円。住宅ローンの返済と合わせると、住居費だけで50万円程度が固定で消えていきました。 

 

想定外の支出

それに加え、子育てコストも“想定外”の連続でした。Aさん夫妻には、2歳になる娘がいます。保活に励んだものの、港区の認可保育園には入れず、利便性を優先した結果、認可外保育園とベビーシッターを利用。保育コストは年間150万円を超えていました。さらに「将来の選択肢を広げたい」とインターナショナルプリスクールの体験にも参加し、月3万円の英語教室に通わせていました。 

 

また、車は2台保有しています。Aさんの趣味の高級外車に、妻Bさんは子どもの送迎用に国産のコンパクトカー。駐車場代は2台で月8万円、保険・税金・ガソリン代を含めれば、車だけで年間120万円以上の維持費が発生していました。 

 

「住宅費」「保育・教育費」「車両費」といった固定費だけで、毎月の支出は80万円以上に。手取り収入が夫婦で月115万円~120万円あっても、そこから生活費を差し引くと、貯蓄に回せるお金はほとんど残りません。それが“年収2,000万円夫婦”の現実だった。