高齢化が進む現代社会において、親の「ひとり暮らし」は多くの家庭が直面する現実です。老いていく親と、それを心配する子。親子関係が逆転したとき、どのような距離感で、どのような関わり方をしていけばいいのでしょうか。
〈年金20万円〉1人暮らしの78歳元教員父が「絶対に来るな!」と徹底拒否…心配した50歳娘が実家の玄関ドアをこじ開けた先に見た〈悲惨すぎる光景〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

頑固な父「もう俺のことは放っておいてくれ」

佐藤由美子さん(50歳・仮名)の胸騒ぎは、日増しに大きくなっていました。埼玉県で1人暮らしをする父、鈴木健一さん(78歳・仮名)と、もう2週間以上も連絡が取れていないのです。

 

「もしもし、お父さん? 変わりない?」

 

2週間前、いつものようにかけた電話の向こうで、健一さんの声は不機嫌に響きました。

 

「変わりない。忙しいからもう切るぞ。それから、頻繁に電話してくるな。こっちへも絶対に来るなよ」

 

一方的に切られた電話に、由美子さんはため息をつくしかありませんでした。健一さんは、半年前に妻(=由美子さんの母)を亡くして以来、めっきりと元気がなくなっていました。近所付き合いはもともとあまりなく、趣味だった囲碁仲間とも疎遠になっているようでした。元教員だった健一さんは、非常にプライドが高い人です。生徒たちからは「厳格だが、情に厚い先生」として慕われていたと聞きます。そんな父だからこそ、たとえ娘であっても、弱みを見せることを極端に嫌うのです。

 

幸い、元教員というだけあり、およそ20万円と平均を大きく超える年金を受け取っているため、経済的な不安はありませんでした。だからこそ、「放っておいてくれ」という言葉を、由美子さんはこれまで額面通りに受け取ってきました。

 

電話を切られてから3日後、由美子さんはショートメッセージを送りました。「元気なら返信して」。しかし、既読の印がつくことはありませんでした。由美子さんは1週間に1度は健一さんに連絡をしては、変わりはないか、確認をしていました。

 

「ちょっとしつこかったかな」

 

株式会社ルリアンが40 歳から 69 歳までの人を対象に行った『相続・終活に関する全国調査 2025』によると、父親への連絡頻度は、「週1回以上」33.2%、2週間に1回以上 8.0%、月1回以上 13.9%。この結果から鑑みると、1週間に1度の連絡は、決して珍しくはありません。特に離れて暮らすなら、よくある親子関係といったところでしょうか。

 

そしてこの後も、父・健一さんとは連絡がつかず、気づけば応答なしのまま2週間以上が経過していたのです。