(※写真はイメージです/PIXTA)
「賃上げムード」のなかで、誰の給料が上がっているのか?
全体として賃金上昇の流れがあるとはいえ、それが誰に、どのように波及しているのかは気になるところです。人材サービス大手のパーソルキャリア/dodaが行った調査(約5,000人対象)では、「基本給が上がった」と回答した人が48.9%と、ほぼ半数に達していました。
一方で「変わらなかった」と答えた人も44.9%と高く、すべての人に恩恵が行き渡っているわけではありません。
昇給額の平均は1万4,701円。金額帯で最も多かったのは「1~3万円未満」(48.2%)で、次いで「1万円未満」(38.9%)となっており、小幅ながら収入増を実感している人が一定数存在していることがわかります。
昇給の理由を聞いたところ、もっとも多かったのは「年次定期昇給」で61.6%。次に「ベースアップ(ベア)」が48.4%と続き、物価高への対応として多くの企業が一律の賃上げを実施している現状が見てとれます。
昇給額に関しては、年代によっても違いがありました。20代の平均昇給額が1万5,274円と最も高く、企業による若手人材の獲得・定着への関心の高さが反映されていると考えられます。30代以上になると14,000円台で落ち着き、かつての年功序列的な昇給構造に変化が生じている様子も見受けられます。
企業規模別に見ると、大企業(従業員1,000人以上)では平均1万6,898円の昇給に対し、小規模企業(99人以下)では1万1,935円にとどまり、約5,000円の差がついています。企業の財務余力が昇給額に直接影響している実態が明らかです。
勤続年数別では、「1~5年未満」の層が平均1万5,409円と最も高い結果に。入社数年目で組織の中核を担い始める人材への期待の表れと見ることができそうです。企業のリテンション施策が、戦略的な昇給にもつながっている可能性があります。
なお、個人の実績に基づく「考課昇給」は18.1%、「昇進・昇格による昇給」は10.4%にとどまり、多くの昇給が制度的・一律的である現状も浮き彫りとなりました。
「ベースアップ」による底上げが進む一方で、成果主義やスキル重視の報酬制度への転換は道半ばといえます。今後は、資格取得やスキルアップといった個人の取り組みが、昇給の鍵を握る局面も増えていくでしょう。自らの価値を高めていく姿勢が、賃金向上につながる時代が本格化しつつあります。
[参考資料]