経済ニュースで「賃上げ」の話題が目立つ一方、実感として給料が増えた人とそうでない人の差はなぜ生まれるのでしょうか。最新の統計や調査をもとに、昇給を実現した人と変わらなかった人を分ける「3つの違い」に迫ります。
給料が上がっているのは、いったい誰だ?「昇給した人」と「変わらない人」を分ける「3つの違い」とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

「名目賃金」は増加も「実質賃金」は依然として厳しい状況

厚生労働省が発表した『毎月勤労統計調査(令和6年度分結果確報)』によれば、就業形態にかかわらず、事業所規模5人以上の労働者の平均現金給与総額は月額34万9,388円と、前年より3.0%上昇しました。ボーナスなどの特別給与が7.5%増と大きく伸びたことが全体を押し上げた形です。

 

このうち一般労働者は月45万5,726円で3.5%の増加、パートタイム労働者も11万2,637円で3.9%上昇しました。

 

とはいえ、物価上昇の影響を加味した「実質賃金」の面では依然として回復が見られません。物価を反映する消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)に基づいた実質賃金指数は98.7となり、前年比で0.5%のマイナス。名目上の賃上げが続いているものの、購買力の面ではむしろ減退しています。

 

業種別では、建設業(5.2%増)、金融・保険業(6.0%増)、鉱業・採石業等(7.6%増)といった分野で賃金が大きく上昇。一方で、不動産業(0.8%増)や複合サービス事業(0.2%増)は伸びが鈍く、業種ごとの差が目立ちます。

 

さらに、労働時間に関しては所定外労働(残業)が前年より2.5%減少。とくに運輸・郵便業では5.7%の減少が記録されました。全体の実労働時間も1.2%減っており、働き方改革や業務効率化の影響がうかがえます。

 

パートタイム労働者の時間当たり給与は平均1,357円と4.3%の伸びを見せましたが、勤務時間そのものが減っており、手取り収入の増加にはつながりにくい側面も。パートの比率は31.01%と高い水準を保っており、非正規雇用の多さが引き続き注目されます。

 

総じて見ると、賃金が名目上では増えているにもかかわらず、生活実感としての豊かさは感じにくい状況が続いています。物価とのギャップが、消費回復の足かせとなっていると考えられます。