老後の生活設計は、多くの人にとって大きな関心事。十分な年金と貯蓄があれば安泰だと考えがちですが、予期せぬ出来事で計画は脆くも崩れ去ることがあります。特に、我が子の将来を思う親心から、老後資金を差し出してしまうケースは珍しくはありません。
「お父さん、本当にごめん…」と土下座する45歳のひとり息子に絶句。〈年金月19万円〉〈貯蓄5,000万円〉72歳元公務員、愛息を信じ続けた果てに「老後破産」が確定したワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

崩壊した老後計画…「共倒れ」という残酷な現実

ただ、ビジネスの世界は簡単に成功できるわけではありません。

 

「ごめん、お父さん。追加費用で、もう500万円必要で……どうにかならないかな」

 

その後も、正樹さんのお金の無心は続きました。いつしか通帳の残高が1,000万円を切ってしまいましたが、それでも和夫さんは「もうすぐ成功するはずだ」と自分に言い聞かせ続けたのです。

 

しかし、息子の成功を夢見る日々は、突然、終焉を迎えます。

 

「お父さん、本当にごめん……」

 

土下座する正樹さん。「簡単に成功できる」「短期間で高収益も可能」などとうたったフランチャイズビジネスは、いつまで経っても軌道に乗らず、追加費用がかさむばかり。「もしかして、詐欺?」と思い始めた正樹さん。そこでフランチャイズビジネスから撤退することを決断します。

 

しかし、それまでにかかったお金は3,000万円。もちろん返ってくるわけがありません。世の中には、詐欺とはいえなくても、“詐欺的なフランチャイズビジネス”は多いもの。過大広告と誇張された宣伝、不透明な契約内容、不十分なサポート体制……このようなビジネスに引っかからないためにも、十分な情報収集と、契約内容の確認、既存加盟店への聞き込みなど、念には念を入れて確認したほうが身のためです。

 

千恵子さんには内緒で正樹さんを援助してきた和夫さん。残り僅かの貯金通帳を見せながら懺悔すると、「もう老後破産、確定じゃない!」と大泣き。そのまま体調を崩してしまったといいます。

 

平穏な老後は、跡形もなく消え去りました。残されたのは、あまりにも重い絶望と、「共倒れ」という残酷な未来だけでした。「必ず儲かる」は、詐欺の常套句。少しでも疑問があれば第三者に相談する冷静さが必要です。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』