(※写真はイメージです/PIXTA)
思いもしない「妊娠」でも「自分たちなら大丈夫」と思っていた
出産を決意したものの、現実は夫婦が思い描いたようには進みませんでした。美咲さんを、予測以上に重いつわりが襲ったのです。通勤することもままならなくなり、仕事どころではない状態に。結局、予定よりも大幅に早く産前休暇に入らざるを得なくなりました。この時点で、世帯の収入源は拓也さん一人に大きく依存することになります。
そして、無事に出産。わが子を抱いたとき、美咲さんの心境に決定的な変化が訪れます。 「この子の成長を一瞬たりとも見逃したくない」―― 仕事への復帰よりも、子育てに専念したいという気持ちが、日に日に強くなっていったのです。
国立社会保障・人口問題研究所の『第16回 出生動向基本調査』によると、2015~19年に第1子を出産した人のうち、42.6%が育児休業を利用し就業を継続、11.2%が育児休業を利用しないで就業を継続しています。一方で、23.6%は出産を機に退職。20年前(39.3%)と比較して大きく減ってはいるものの、5人の1人の割合で出産を機にキャリアを中断させています。
最終的に、美咲さんはキャリアを中断することを決断しました。2馬力で手に入れた、都心のタワーマンション。しかし、拓也さん一人の収入で、月々30万円ほどのローン返済に加え、高額な管理費や固定資産税を払い続けるのは、どう考えても不可能でした。みるみるうちに貯金は目減りし、家計は火の車となります。豪華なホームパーティーが開かれることもなくなり、SNSの更新も途絶えました。そして出産から1年度、夫婦は、夢のマイホームを手放すことを決断します。
「煌びやかな生活とはおさらばです。幸いにも市況がよく、想像以上に高く売れたのは不幸中の幸い。それにしても、家族に対する考え方がこんなにも変わるとは自分たちも思ってもいませんでした」
[参考資料]
国立社会保障・人口問題研究所の『第16回 出生動向基本調査』