我が子の将来を思い、選択する「名門私立小学校」への道。それは時に、「年収1,000万円」という高収入世帯をも苦しめるほどの経済的負担を伴います。授業料はもちろん、その特有のコミュニティから生じる交友費が、家計を静かに蝕んでいくのです。合格の先に待つ、知られざる現実を見ていきましょう。
〈年収1,000万円超〉45歳のサラリーマンの父、息子の「名門私立小」合格に涙したが…入学後、通帳から消えていく毎月の給料。原因は〈ママ友ランチ1回7,000円〉の世界 (※写真はイメージです/PIXTA)

大学で抱いた「内部進学組」への嫉妬がお受験の原動力

「息子の受験番号を見つけた瞬間は、今でも忘れられません。夫婦で涙しました」

 

そう語るのは、大手メーカーで管理職の田中良介さん(42歳・仮名)。年収1,000万円を超え、同年代のなかでは一歩頭抜けた存在であることを自負しています。しかし、ずっと劣等感を抱えていたといいます。それは大学時代にさかのぼります。良介さんが通った私立大学は、いわゆる内部進学組が半数ほどを占めていたといいます。なかでもヒエラルキーの頂点にいたのは、小学校からの内部進学者。自身は大学入学のため田舎から上京し、アルバイトをしながら6畳一間で生活していますが、小学校からの内部進学者は生まれたときからお金持ち。学生でありながらタワマンの上層階に住み、すでに“都会の大人”の雰囲気を醸し出していました。

 

「住む世界が違うので関わることもほとんどなかったのですが、あまりの余裕ぶりに、少しは嫉妬を覚えましたよね。こちらは仕送りが足りず、ご飯を抜くときもあるのに、あの人たちは親のお金で悠々自適な生活をしているわけですから」

 

大学時代も、そしてその後も、“住む世界異なる人たち”とは関わることなく生きてきたという良介さんですが、第一子が誕生したとき、ふと、「この子には楽な人生を歩んでほしい」と思ったといいます。そして“お受験”の可能性を考えるようになりました。

 

調べてみると、確かに小学校受験をする家庭の多くは裕福ではあるものの、いわゆる“一般の人”も多いことがわかりました。文部科学省『令和5年度 子供の学習費調査』によると、子を公立小学校に通わせる家庭のうち「年収1,200万円以上世帯」は8.8%に対し、私立小学校は53.1%。私立小学校には経済的に裕福な家庭が圧倒的に多いものの、3割は年収1,000万円未満世帯。ちなみに私立中学校では4割程度が年収1,000万円未満世帯です。

 

話し合いのうえ、小学校受験に挑戦することにした田中夫婦。4歳からお受験塾に通い、親子で努力を重ねてきました。そしてその努力がしっかりと実を結んだのです。