(※写真はイメージです/PIXTA)
上位3%のパワーカップルが手に入れたラグジュアリーな生活
大手広告代理店に勤める佐藤拓也さん(仮名・38歳)と、IT企業でマーケティングを担当する美咲さん(仮名・38歳)。夫婦ともに順調にキャリアを重ね、世帯年収は2,000万円を超えていました。所得にすると1,300万~1,450万円ほど。厚生労働省『令和5年 国民生活基礎調査』によると夫婦は上位3.1~6.7%に、世帯主30代世帯に限ると3.0~4.4%に位置しています。夫婦は紛れもなく、日本の所得上位層に位置していたのです。
そんな二人が暮らすのは、都心湾岸エリアにそびえ立つタワーマンションの一室でした。購入したのは、23区の新築マンションの平均価格が億に達するより前のこと。今よりも安く買えたとはいえ、それでも価格は9,800万円と、当時の夫婦としても清水の舞台を飛び降りる思いだったと振り返ります。
月々28.3万円の返済。さらに毎月5万円ほどの管理費と修繕積立金がかかります。しかしダブルインカムであることを考えると、月々のローン返済額もシミュレーション上は問題なし。思い切って購入を決断しました。
新居のリビングから望む、宝石をちりばめたような夜景。それをバックに撮った写真をSNSに投稿すると、友人たちから「すごい!」「まさに勝ち組だね!」「今度遊びに行かせて!」と、羨望のコメントが殺到しました。その反響が、二人の自尊心をくすぐります。
最近は、よく友人を招いてホームパーティーを開き、高級スーパーで買った食材とワインでもてなしていました。絵にかいたようなラグジュアリーな都心のタワマン暮らし――夫婦は人生の絶頂期を味わっていたのです。
「二人ともキャリアが優先。だから結婚しても子どもを持たない選択をしました。ここ(家)から眺望は、そんな選択をしたから手に入れることができたんです」
しかし、そんな輝かしい日々に影が差し始める出来事が起きました。それは美咲さんの妊娠。もともと夫婦間で「子どもは持たない」と決めていた二人にとって、それはまさに青天の霹靂だったのでした。「親になるイメージどうしても持てなくて。だから『子どもは持たない』と決めていたんです」と美咲さん。しかし、自分のなかに新しい命が宿っていると考えると、何ともいえない気持ちが込み上げてきたといいます。40代を目前にした年齢を考えると、これが最後のチャンスかもしれない――。
「周りには子育てしながらキャリアを築いている人も大勢いる。私たちなら大丈夫。キャリアに影響することはない」
二人には根拠のない自信がありました。そして最終的に二人は「産む」という結論に達しました。世帯年収2,000万円という経済的な基盤と、「勝ち組」としての自負が、彼らの決断を後押しします。