(※写真はイメージです/PIXTA)
母娘が太鼓判を押した「老人ホーム」に入居したが
都内で働く田中美咲さん(仮名・55歳)の母・幸子さん(仮名・82歳)が、半年前に老人ホームに入居しました。きっかけは、自宅での転倒。幸い大事には至らなかったものの、これを機に1人暮らしへの不安を口にするようになったのです。
ひとり娘の美咲さんは、実家に行く頻度を増やすなど、できるだけ幸子さんの様子を気にかけるようにしますが、仕事で多忙なことが多く、限界があります。親子で話し合った末、老人ホームへの入居を決めました。
決定のポイントはまず費用。年金月15万円の幸子さん。足りない分を貯金から捻出するとして月5万円程度が限度。月額費用がその範囲で賄えることが絶対条件。また何かあったときに駆けつけることができるよう、幸子さんの自宅からのアクセスも譲れない条件でした。
そして見つけたのが、幸子さんの自宅から車で30分ほど、閑静な住宅街にたたずむ介護付きの有料老人ホーム。見学で訪問した際のスタッフの対応もよく、「ここなら安心して暮らせそう」とふたりとも太鼓判を押しました。
入居後の幸子さんは、同年代の友人もでき、レクリエーションにも楽しそうに参加していました。美咲さんも、週末に顔を見せるたびに明るく、楽しそうな姿をみせてくれる幸子さんに、肩の荷が下りるのを感じていました。プロの介護士に見守られ、栄養バランスの取れた食事も出る。これで母は安泰だ。そんな穏やかな日々が続くものと、信じて疑わなかったのです。
ある、仕事が終わった美咲さん。ふとスマートフォンをみると、着信の表示。幸子さんが入居する老人ホームの番号でした。
折り返すと、「田中さん、お母様のことなんですが……」と電話口の施設長。の少し強張った声に、美咲さんの胸がざわつきます。定期検診で血糖値の異常が見つかり、提携先の病院で精密検査を受けたところ、幸子さんは「糖尿病」と診断されたというのです。