(※写真はイメージです/PIXTA)
夫との価値観の違い
また、子育てを通じて夫との教育観の違いも浮き彫りになってきた。Aさんは「息子にはなるべく奨学金を借りさせたくない」という思いから、学資保険の加入を検討している。一方、夫は「貯蓄でどうにかなる」と考えており、さらに「いざとなったら親にも頼れる」と楽観的に考えているという。
「私は自分の進学時に親や親族に頼るという選択肢がありませんでした。奨学金を借りることも1つの選択肢ですが、返済のタイミングで自分と同じような思いをさせたくない、という気持ちが強いんです」
夫と教育に対する価値観の違いを感じる場面や、奨学金を借りていない同僚や友人たちが、キャリアアップやライフスタイルの変化において、より自由な選択をしている姿を見ると、羨ましさを感じる瞬間もあるという。
それでも、Aさんは奨学金そのものを否定しているわけではない。
「奨学金があったからこそ大学で学べて、いまの仕事に就けました。だからこそ、奨学金を単なる“借金”ではなく、“自分のなりたい姿を実現するための手段”として前向きに捉えてほしい。学びたいことがある・挑戦したいことがあると考えている学生が、進学を諦めるような社会にはなってほしくありません」
とはいえ、返済がライフプランに与える影響は無視できない。
「社会に出てから返済に追われ、選択肢が狭まり、人生設計の足かせとなるようなことは、あってはならないと思います」
借りた当初「学生」のときにはわからなかった…人生に想像以上の影響をおよぼす奨学金
奨学金の返済が、結婚・出産・キャリア形成といった重要な人生の選択に、ここまで深く影響するとは考えてもいませんでした──。そのような声が弊社にも数多く寄せられている。
「奨学金の返済があるため、子どもを持つ決断ができない」
「本当は別の職業を希望していたが、収入を優先して職種を変えた」
「結婚相手の家族に返済額を問題視され、話が立ち消えになった」
「昼の仕事だけでは収入が足りず、夜も働くダブルワークを数年続けている」
こうした声は少なくないが、これは個人の努力不足ではなく、制度や社会構造に起因する問題だといえるだろう。