奨学金に対する認識は、個人や世代間で多様です。奨学金を「将来への投資」と捉え、自身の学びやキャリア形成のために必要不可欠な制度と考える人がいる一方で、特に家庭を持つ段階になると「借金」としての側面が強く意識され、パートナーやその家族とのあいだで認識のギャップが生じることもあります。本記事では、奨学金がもたらす現実的な影響について、アクティブアンドカンパニー代表の大野順也氏が考察します。
息子との結婚は諦めてくれ…月収32万円・29歳会社員女性、婚約者の両親が大反対した「奨学金の返済額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

大学生の約3人に1人が奨学金を利用

日本学生支援機構の調査によれば、令和5年度に奨学金を利用していた大学生は約3人に1人。総貸付残高は直近10年で約1.8兆円も増加している。その背景には、物価上昇や賃金の伸び悩み、そして大卒採用を前提とする社会構造などがある。大学の授業料の高騰も無視できない。値上げを実施する大学が相次ぐなか、過去40年間で国立大学の学費は約2.4倍、私立大学では約1.8倍にまで上昇している。

 

奨学金は「個人の選択」とされがちだが、実際には「借りざるを得ない」状況に置かれている若者が多いのが現実だ。だからこそ、「貸す」支援だけでなく、「返す」ことへの支援も社会全体で考えていく必要がある。奨学金を次の世代へと返還し、自らも自由に人生設計を描けるようにする——そのためには、奨学金を「日本の未来を担う若者への投資」であると捉え直し、返済支援を含めた包括的な制度設計と社会全体の理解が不可欠だ。いまこそ奨学金制度のあり方を見直すときである。

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者