「定年」という節目を迎えたとき、新たな職場を模索する人も珍しくありません。しかし「かつての肩書を駆使すれば、すぐに就職先は決まるだろう」と高をくくっていると、まったく通用しない事実に唖然。家にもどこにも居場所がない……そんな悲しい顛末を迎えるケースもあるようです。
惨めだな…〈時給1,580円〉で居酒屋バイトをこなす〈最高月収100万円〉61歳元部長。「定年後の屈辱」に悲鳴 (※写真はイメージです/PIXTA)

居酒屋バイトで意外に役に立つ「元・大企業部長」の肩書

家にいるのも居た堪れなくなり外出するも、特にすることもありません。だからといって、就職活動を続け、「まただめか――」とため息ばかりをつく生活もイヤだ。そう思っていたところ、目に入ったのがたまたまいった居酒屋で目に入った「バイト募集」の貼り紙。

 

「学生時代、飲食店でアルバイトをしていたことを思い出しました。接客業が楽しかったなという記憶です」

 

家にいても妻の目があるし、だからといって、再び転職活動に力を入れる気になれない。思い切ってバイトに応募することに――これが、いま、佐藤さんが居酒屋の厨房に立っている経緯です。

 

【シニアが働いている理由】

収入がほしいから…41.6%

働くのは体によいから/老化防止になるから…20.2%

仕事そのものが面白いから/自分の活力になるから…17.0%

仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから…4.0%

出所:内閣府『令和4年度 高齢者の健康に関する調査』

 

しかし、学生時代のころのように、楽しくアルバイト、というわけにはいきません。60歳を超えた佐藤さんに教育係に任命されたのは、バイトリーダーの22歳の男性。「将来は自分の店を持ちたいと思っている」と、高い志をもっている若者です。だからこそ仕事には厳しく、「何度同じこと言わせるんだよ!」などと怒られることも。

 

「惨めですよね。40も下の若者に説教されるんですから」

 

仕事になかなか慣れず、また圧倒的に年下のバイト仲間から怒られる日々に、悲鳴をあげることもしばしば。それでもアルバイトを始めてすでに8ヵ月。時給は1,380円から1,580円と、200円ほどアップ。少しずつ、仕事も楽しめるようになってきてといいます。また仕事を離れると、「元・大企業部長」という肩書からか、学生アルバイトから進路相談を受けることも多いとか。

 

「若い人たちとのコミュニケーションで、昔の肩書が役に立つなんて思いもしませんでした」

 

当初、惨めな思いばかりするから、すぐに辞めようかと思っていたといいますが、今ではやりがいを感じられるようになったと佐藤さん。年金をもらえるようになるまでは続けようかと考えているといいます。

 

[参考資料]

出所:厚生労働省『令和4年就労条件総合調査』

出所:内閣府『令和4年度 高齢者の健康に関する調査』