※写真はイメージです/PIXTA
老後の生活設計を狂わせる子・孫との同居
幸せに暮らしていると思っていた次女家族でしたが、話を聞いてみると、まったく違いました。遡ること1年目に麻実さんの夫はリストラで失業。それ以来、働かずに家にいるだけ。育児にも非協力的。麻実さんは家計を支えるためにパートに出るようになりましたが、育児と仕事の両立で限界に達したといいます。
「あいつ(=夫)がいないほうが生活が楽」
佐藤さん夫婦も、そのような状況であれば離婚も仕方がないと思い、特に反対もしなかったといいます。その後、麻実さんは無事、離婚成立。養育費は期待できなかったので取り決めは行わず、頼れるのは麻実さんの収入だけという状況になりました。
麻実さんは10年のブランクを乗り越え、パートから正社員の仕事に。ただ月収は20万円ほどと親子3人が暮らすには十分とはいえない額でした。
「もう少し頼ってもいいかな」
麻実さんの申し出に佐藤さん夫婦が断るわけはありません。麻実さん親子の次のステップを応援する決心をしました。しかし、穏やかな生活は一変し、朝から晩まで孫娘の世話に追われる日々が始まりました。日中は健一さんと美智子さんが孫の面倒を全面的にみます。麻実さんが帰宅したら、孫の面倒からは解放されますが、そのあとは家事でバタバタ。休日だからといってゆっくりと過ごすことはできず、老後の楽しみだった温泉旅行はいったん中止。美智子さんも自由な時間がなくなり、にぎやかで幸せながら、思い描いていた穏やかな生活を懐かしむことも。
「次女は仕事を頑張って、家にもお金も入れてくれているので、経済的な負担はまったくありません。目に入れても痛くないとはよくいったもので、やっぱり孫はかわいい。ただ一緒に暮らしていると、いつでも優しいじぃじ、ばぁばではいられません。特にきつく叱ってしまうこともある。孫との関係が変わってしまうのではないか、そんな不安もあります」
厚生労働省『国民生活基礎調査』によると、2022年、65歳以上がいる高齢者世帯2,747万世帯のうち、3世代世帯は194万世帯で、全体の7.1%。1990年に427万世帯、高齢者世帯の39.5%を占めていたのが、2000年には414万世帯(26.5%)、2010年334万世帯(16.2%)、2019年240万世帯(9.4%)と、一貫して減少傾向にあります。いまやサザエさん的家族は珍しい存在になっています。そこには、現在の高齢者たちが抱えていない悩みや不満があるようです。
[参考資料]
厚生労働省『国民生活基礎調査』