
高齢者の住まい…「建替え」か、それとも「老人ホーム入居」か
神奈川県在住の元中学校教員、鈴木昭夫さん(仮名・75歳)と妻の美智子さん(仮名・75歳)は、退職後の生活を穏やかに過ごしていました。公立学校での長年の勤務により、年金は夫婦合わせて月約40万円。さらに教員時代から堅実に貯蓄を重ねたうえ、夫婦二人分の退職金も。金融資産は6,000万円を超えていました。
そんなふたりが直面した問題が、30代で購入した自宅に、住み続けるか、それとも住み替えるか。住み続けるとなると、この先、高齢のふたりには住みにくく、バリアフリー住宅への建て替えを検討したほうがいい。ただ介護や医療の問題を考えると、自宅に住み続けるという選択肢を捨て、施設に入居するのも手。
内閣府の調査では、高齢者が「住み替え意向をもつようになった理由」として、最も多くの声が挙がったのが「健康・体力面で不安を感じるようになったから」(24.8%)。「自身の住宅が住みづらいと感じるようになった」18.9%、「自然豊かな環境で暮らしたいと思った」(10.3%)、「買い物が不便になった」(10.2%)、「交通の便が悪くなった」(9.8%)と続きます。
結局、2人が選んだのは、老人ホームへの入居。「終活という意味も込めて、最終的には自宅も売却してしまおうと考えています。2人の子どもに自宅を残したところで、分けるのに困るでしょうから」、と理由を語る鈴木さん夫婦。いくつか見学をしたうえで決めたのは、緑豊かなロケーションがうりの老人ホーム。入居一時金は2,000万円。月額費用は35万円。諸費用を合わせると、毎月、貯金からの取り崩しは必須です。
これまで質素倹約を心がけてきたふたりにとってはかなり贅沢な選択です。それでも「人生最後の贅沢かもしれないから」と決断をしたといいます。
入居を決めたホームは、「高級老人ホーム」と呼ぶにふさわしい造り。エントランスを入ると、まず目に飛び込むのは、手入れの行き届いた中庭を望む開放的なラウンジ。日差しが差し込む空間には、クラシック音楽が静かに流れ、優雅な時間が流れていました。共用施設も充実。専属のシェフが腕を振るうダイニングでは、季節の食材をふんだんに使った食事が提供され、栄養バランスはもちろん、見た目にも美しい料理が並びます。大浴場にフィットネスジム、図書室、カラオケルーム、麻雀ルーム……と施設も充実。
居室は広々としており、夫婦二人で暮らすには十分なスペースです。大きな窓からは緑豊かな庭が広がり、日中は趣味の園芸を楽しんだり、入居者同士の交流を楽しんだり。充実した時間を過ごすようになったのです。