「まだ先の話」だと思っていたことが、ある日突然、目の前に現れる。親の介護とお金の現実……その問題は、誰にとっても例外ではありません。
母さん、ごめん…年収550万円〈45歳ひとり息子〉の絶望。「私は大丈夫」と微笑む〈要介護の78歳母〉、年金月7万円の限界 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金月7万円…介護施設への入居は不可能なのか?

和子さんの要介護2は、日常生活動作に部分的な介助が必要な状態です。立ち上がりや歩行は困難で支えを要し、爪切りや着替えなどの身だしなみにも介助を要します。食事や排泄には部分的な見守りや手助けが必要です。薬を飲み忘れる、食事をしたことを忘れるなどの認知症の初期症状が見られる場合もあります。このようにみていくと、要介護2でひとり暮らしは、いくら介護サービスを駆使しても難しいように感じます。実際に株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護が行った調査では、介護施設への入居時の要介護度は、「自立(介護認定なし)」から「要介護2」までを合わせて7割弱に達しています。

 

しかし、和子さんの年金は月7万円。貯金はわずか。さらにひとり息子の健太さんは、家族の暮らしだけで精いっぱい……このような状況で、施設への入居は金銭的に難しいと考えるでしょう。

 

「施設に入居したほうが、母も安心して暮らせる。でも費用的に……諦めるしかないんです。本当、情けないですよ」

 

自分を責める健太さん。しかし介護施設には様々な種類があり、費用も大きく異なります。原則要介護3以上が対象ではあるものの要介護1・2でも入居が認められることがある「特別養護老人ホーム(特養)」や、介護型のケアハウスであれば入居費用は比較的安価。検討する意味があるでしょう。

 

また、所得や預貯金が一定額以下の場合、食費と居住費(滞在費)の自己負担額を軽減してくれる「負担限度額認定(特定入所者介護サービス費)」など、施設入居の費用負担を軽減するための公的制度もあります。

 

このような制度も駆使したら、介護施設の入居も現実味が帯びてくるでしょう。健太さんが和子さんの施設入居を検討するうえで、まずすべきは「地域包括支援センターへの相談」。ケアマネージャとの連携も深め、費用的に入居可能な施設を探していきます。

 

介護は負担が大きいほど、周囲との関係は希薄となり、孤立しやすくなります。「お金がかかるから」と、本来受けられる支援も最初から諦めてしまったり、または情報そのものが行き届かなかったり……よくあることです。まずは「助けて!」と声を出すことが肝心です。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025」