
迫りくる介護の現実と経済的負担
エンジニアとして働く田中健太さん(仮名・45歳)。パート勤めの妻と子ども2人の4人暮らし。月12万円の住宅ローン返済は年収550万円ほどだという健太さんには「負担が大きい」といいます。小遣いを極限まで減らし、何とか耐え忍ぶ日々が続いています。
そんな田中さんの最近の一番の悩みは、実家でひとり暮らしをしている78歳の母親、和子さん(仮名)のこと。関節疾患により、日常生活に支障をきたすようになり、要介護2の認定を受けています。ひとり暮らしを心配する健太さん対して「私は大丈夫だから」と心配させまいと気丈に振る舞いますが、ひとり暮らし&在宅介護を続けることの限界が迫っています。
だからといって、家計がひっ迫する健太さんには、何もできることがありません。できることといえば、ごくたまに帰省し、身の回りの世話をすることくらい。根本的な解決はなにもできません。
「母さん、ごめん……」
健太さんの胸には、常に罪悪感が渦巻いています。
和子さんのように要介護認定を受けた場合、介護保険サービスを利用できますが、もちろん費用がかかります。要介護2の場合、利用できるサービスの区分支給限度額は月額約20万円ですが、このうち1割(所得によっては2割または3割)は自己負担となります。加えて、サービスによっては保険適用外の費用が発生することもあります。たとえば、訪問介護の回数が増えたり、デイサービスに加えてショートステイを利用したりすれば、自己負担額は月数万円に上ることも珍しくありません。
和子さんの月7万円の年金収入では、これらの介護サービス費用に加えて、光熱費、食費、医療費などを賄うのは非常に困難。わずかな貯金も、いつ底をつくかわからない状態でした。