子どもの健全な成長や幸福を最優先に考える原則「子の利益」が見直されつつあります。離婚等の理由で損なわれる「親族との交流」の対象に祖父母を含むことはできるのでしょうか。本記事ではAさんの事例とともに、子の離婚に伴う祖父母と孫の交流について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
愛する息子は突然に…嫁は「もう赤の他人なので」と残し、孫とともに退散。ひとりぼっちで置き去りにされた60代母が、慟哭の中で残した〈一通の手紙〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「祖父母との交流」が法律で認められることも

令和6年5月17日、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が成立しました(同月24日公布)。2026(令和8)年5月までに施行されます。この法律は、父母の離婚等において「子の利益」を確保するため、民法等の規定を見直すために成立されたものです。

 

「子の利益」とは、子どもの健全な成長や幸福を最優先に考える原則であり、家庭裁判所が親権や面会交流などを判断する際の重要な基準となります。今回の民法改正では、特に以下の点が強調されています。

 

・子どもの心身の健全な発達:子どもが安心して成長できる環境を確保すること。

 

・親子関係の維持:離婚後も子どもが両親や祖父母と適切に交流できるよう配慮すること。

 

・養育費の確保:子どもの生活を安定させるため、養育費の支払いを強化する仕組みが導入される。

 

・監護権の適正な行使:親権者が子どもの利益を最優先に考えて監護すること。

 

この改正により、祖父母との交流についても「子の利益」に基づいて判断されるため、家庭裁判所が「特に必要」と認めた場合に限り、面会交流が認められる可能性が出てきました。

 

これまで民法には父母以外の親族(たとえば、祖父母等)と子どもとの交流に関する規定はありませんでした。しかし、たとえば、祖父母等と子どもとのあいだに親子関係に準ずるような親密な関係があったような場合には、父母の離婚後も、交流を継続することが望ましい場合があります。そこで今回の改正では、子どもの利益のため特に必要がある場合は、家庭裁判所が父母以外の親族と子どもが交流するよう定めることができる、としています。

 

また、子どもが父母以外の親族と交流するかどうかを決めるのは、原則として父母ですが、たとえば、父母の一方が死亡したり行方不明になったりした場合など、ほかに適当な方法がないときは、次の1~3の親族が、みずから、家庭裁判所に申立てをすることができるようになります。

 

1. 祖父母

 

2. 兄弟姉妹

 

3. 1, 2以外で過去に子どもを監護していた親族

 

Aさんは、専門家から上記の民法改正について聞きましたが、Aさんのケースは家庭裁判所で認められるには理由が弱いことも説明されました。そして、次のようなアドバイスも受けました。

 

「いまは直接の交流が難しくても、お孫さんへの気持ちをなんらかの形で伝える方法はあります。たとえば、お孫さんに手紙を書くのはどうでしょうか? または、お嫁さんに『あなたとの関係がどうであれ、私は孫の成長を見守りたい』と伝えることで、関係が改善する可能性もあるかもしれませんよ」