(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢者の投資の失敗…誰の責任か?
田中さんが投資したのは、金融庁に登録された業者が取り扱う、れっきとした合法商品。リスク説明義務も法的には果たされており、自己責任の範囲と言わざるを得ません。田中さんのように、「元本保証」「高利回り」などの言葉に安心感を抱き、商品内容を深く理解しないまま契約してしまう高齢者は少なくありません。
一方で、高齢者ほど元本割れの理由を自己ではなく他者に求める傾向があります。
金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』によると、元本割れの経験の受け止め方として、「相場の変動によって元本割れするリスクを金融機関が十分に説明しなかったためだ」著しい誤解を招く広告、勧誘を金融機関から受けたためだ」と、他者の責任にした割合は、全世代平均で9.4%。40代までは平均を下回り、50代~60代は10.0%、70代は11.4%と平均を上回ります。
このような傾向からか、老後資産を増やそうとして失敗する高齢者は少なくありません。警察庁『令和5年 特殊詐欺等の状況』によれば、2023年に発生した投資詐欺は、認知件数411件、被害総額は約51億円。被害者の年齢をみていくと、60代以上が47.7%と半数近くを占めています。投資詐欺とまで言い切れなくとも、「実態が不透明」「説明と異なる配当」「出資者に不利な契約条件」など、グレーな投資案件が高齢者を狙って広がっているのが現実です。
「投資に失敗する高齢者の話なんかを聞いて、『自分は大丈夫』『そんなうまい話に引っかかるわけがない』と思っていました。それなのに……」
情けない、恥ずかしいと、後悔ばかりを口にする田中さん。どんなに悔やんだところで、仕方がありません。
[参考資料]
人事院『令和5年 退職公務員生活状況調査報告書』
金融広報中央委員会『令和5年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』
警察庁『令和5年 特殊詐欺等の状況』