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食料とエネルギーが依然として上昇を主導
2025年5月23日、総務省より「2025年4月分 消費者物価指数(CPI)」の速報値が公表されました。2020年を100とした総合指数は111.5となり、前年同月比で3.6%の上昇を示しました。3月と同率での上昇は、インフレの勢いが一段落したかに見える一方、物価が依然として高止まりしていることも浮き彫りにしています。
特に注目されるのは、生鮮食品やエネルギーなど価格変動が大きい品目を除いた「コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数)」でも109.7となり、前年同月比で3.0%の上昇を記録した点です。内需や人件費など、国内要因が物価を押し上げている兆候が見てとれます。
今回のデータで最も寄与度が大きかったのは、やはり食料とエネルギーです。食料全体の指数は123.6で、前年同月比6.5%の上昇、電気代は13.5%上昇(寄与度0.45ポイント)と、生活に密着するコストが大きく上がっています。中でも「うるち米(コシヒカリを除く)」が98.6%増、「チョコレート」が31.0%、「コーヒー豆」が24.8%の上昇と、日常的な食品に強い値上がりが目立ちました。
さらにガソリンは6.6%、都市ガス代も4.7%上昇しており、家計への圧力は続いています。これらの要因には、国際的な原材料価格の高騰や円安、エネルギー価格の上振れが背景にあります。とりわけ2023年以降の円安進行が輸入品価格を押し上げており、日本の「輸入インフレ体質」が改めて顕在化している状況です。
また消費者物価指数の上昇要因が物だけでなく、サービス価格にも波及している点は見逃せません。たとえば、外食(すし:+5.0%、おにぎり:+18.1%)や保険料(火災・地震保険料:+7.0%)など、サービス関連の価格が上昇しており、人件費の上昇が背景にあると見られます。
また、ルームエアコンなどの家庭用耐久財も19.6%の上昇を記録。企業が値上げを価格転嫁できているという点で、いわゆる「インフレ期待の定着」が進行している可能性もあります。企業による賃上げが伴えば、好循環に転じることも期待できますが、現時点では賃金上昇が物価上昇に追いついているとは言い難い面もあります。