
無邪気に希望を語る娘に放つ、父親の残酷なひと言
「お父さん、私、この大学に行きたい!」
森大輔さん(仮名・48歳)は、娘、美咲さん(仮名・17歳)の晴れやかな笑顔を見て、一瞬、胸が締め付けられるような感覚に襲われたといいます。東京にある有名私立大学のパンフレットを手に、目を輝かせる高校3年生の美咲さん。「やりたいことがあるなら、どんな大学でもいい。東京の大学だっていい。頑張って勉強しなさい」。そう発破をかけたことがありました。その言葉に嘘はありません。しかし、現実はそんなに甘いものではありませんでした。
「すまん、美咲。正直、その大学は学費がちょっと……せめて、学費の安い国公立大学は無理なのか?」
蚊の鳴くような声で謝る大輔さん。妻からは「何を今さら、美咲がかわいそうだと思わないの?」と怒られ、娘は声を出して泣き崩れる。さらにその様子を距離を置いてみている次女。「数年後の私もこんな感じなんだろうか――」と不安に駆られているのでしょうか。リビングに重たい空気が立ち込め、大輔さんも「俺はダメな父親なのか?」という自責の念で押しつぶされそうです。
大輔さんの給与は、月46万円。手取り35万円ほどです。そこから娘2人の教育費を捻出し、住宅ローンを払い……正直、毎月火の車です。確かに、「どの大学でもいい」と豪語することはできなさそう。
「奨学金に頼る手もありますが、私は奨学金の返還で大変な思いをしました。美咲は、できれば奨学金を利用せずに大学に通わせたいと考えているのですが――」