
30代で購入したマイホームから「老人ホーム」に住み替え
長年連れ添った夫婦との穏やかな老後。しかし働き盛りのときに購入したマイホームは、年老いた夫婦には住みにくい……そこで安心して暮らせる老後の住まいとして、夫婦で老人ホームに入居するという選択をするケースも。
高橋浩一さん(仮名・75歳)恵子さん(仮名・72歳)夫婦も、そんな選択をしたひと組。それまで住んでいたのは、都内15階建てマンションの最上階。眺望が気に入って30代で購入したマンションでしたが、室内はバリアフリーがされておらず、地震の際に半日以上エレベーターが止まってしまった経験から、年を取った際の住まいとしてはどうなのか――とずっと考えていたといいます。
そして恵子さんが70歳になったのを機に、マイホームから引っ越すことを決めました。引っ越し先は、夫婦で入居できる老人ホームでした。
「老人ホームといっても、健康な人も入居できる施設で、入居者の半分くらいは健康な同年代です。介護・医療体制も整っているから万一のときでも安心ですし、もちろんバリアフリーだから快適に過ごすことができます」
【老人ホーム入居に関して】
■入居理由
・入院して自宅復帰が難しかった…35.4%
・自宅で介護を受けていたが継続が難しくなった…30.0%
・ひとり暮らしの継続が難しくなった…25.4%
・自立状態で生活できたが将来を考えて…5.1%
・その他/わからない…4.2%
■入居時の年齢
70歳未満…28.0%
■要介護度
自立…5.2%
出所:株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』
入居一時金は800万円、月額費用は夫婦で35万円。一方、浩一さんが受け取る年金は月20万円、恵子さんは月16万円。(額面上は)年金だけで賄える点も、入居を決めた理由のひとつでした。
「まさに理想通りのホームに入居できて、安心だな」
ホームでは同年代の友人もでき、楽しく、そして穏やかな毎日が過ぎていく――ただ幸せな日々はいつまでも続くわけではありません。入居から2年ほどたった残暑厳しい日、朝食後に「ちょっと具合が悪い」とバルコニーの椅子に腰を掛けた浩一さん。恵子さんが気づいたときには、すでに息を引き取っていました。急性心筋梗塞。長年連れ添った夫との突然の別れに、恵子さんはただ悲しみに暮れるしかありませんでした。