高齢になってもなお、子どもに仕送りを続ける親がいます。就職氷河期世代を中心とした中高年の不安定な雇用や低収入、そして「親ならば支えて当然」という意識があるのかもしれません。しかし、そんな支援はいつか終わりを迎えます。
もう限界です…〈年金月17万円〉79歳母、「老人ホーム」入居を決断。30年続けた〈月5万円の仕送り〉を終わらせるはずが、50歳息子からのよもやの返答に涙 (※写真はイメージです/PIXTA)

「これ以上はもう無理です」…79歳、仕送りをやめた母の決断

「もう限界です。自分の老後をちゃんと考えたいんです」

 

そう語る森田智子さん(仮名・79歳)は、夫を10年前に亡くして以来、東京都郊外の築40年近い団地でつつましく一人暮らしを続けてきました。

 

生活の基盤となる年金は、亡くなった夫の遺族年金と自身の年金を合わせて月17万円ほどです。贅沢をせず、節約に努めてきたのには理由があります。森田さんには、50歳になるひとり息子がいます。息子は大学卒業時に就職氷河期と重なり、希望する職に就けなかったこともあり、大学時代から続けてきた仕送りを継続しました。その後も仕事は安定せず、最近ではさすがに金額は減ったものの、今でも月5万円の仕送りをしているといいます。

 

「大学生の頃は、月に10万円ほど仕送りをしました。社会人になってからも定期的に連絡があり、『雇い止めにあった』『仕事が決まらない』『お金が足りない』と……生活できないのでは仕方がないと思い、ずっと仕送りを続けてきたんです。あの子が本当に困っていたのも分かっていましたし」

 

しかし、79歳を迎えた今、森田さんは体調の衰えを強く感じるようになり、病院へ通う回数も増えました。一人での生活に不安を覚えるようになり、ついに老人ホームへの入居を決意します。都内で比較的安価な介護付き有料老人ホームに目星をつけ、申し込みを済ませました。入居一時金は約300万円、月額費用は18万円です。今後のことを考えると、仕送りを続けるのは限界だと感じました。

 

「体が動くうちに、安心して暮らせる場所を決めたい。もう自分を犠牲にして息子を支えるのはやめなければならない。そう思ったんです」

 

こうして森田さんは、30年続けた仕送りに終止符を打つことを決意したのです。