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予想外の出費と生活費の圧迫
佐々木さんは、退職金や貯金を基に、老後はある程度の余裕を持った生活ができると考えていました。
「定年したときに受け取った退職金は2,000万円ほど。これだけあれば、夫婦2人の老後は大丈夫だろうと思って、住宅ローンを一気に払いました。それがすでに半減ですから……長生きはリスクなんですかね」
貯蓄2,000万円。2019年に老後資金2,000万円不足問題と騒がれましたが、そのことからも十分な老後資金だと思えるでしょう。しかしこれはあくまでも目安であり、すべての人にとって「大丈夫」と太鼓判を押せるものではありません。
「老後は、色々と誤算だといえることが続きましたね」と佐々木さん。そのひとつが、妻の病気。何とかならないかと、保険適用外の先進医療を試しました。「結果はどうだったのか……今となってはわかりませんが、お金はかなり使いました」
さらに90歳を超える佐々木さんの親の介護も想定外。親の年金・貯蓄だけは足りず、月1万~2万円ほど捻出することもしばしば。この出費が、ボディブローのようにきいたといいます。
人事院『令和5年 退職公務員生活状況調査』によると、定年退職をした国家公務員の暮らしぶりは意外なほど大変。世帯の家計の状況を聞いたところ、「時々赤字でやりくりに苦労」が23.3%、「常に赤字で生活が苦しい」が18.2%。「ゆとりがある」と回答したのは18.0%でした。安定感が魅力の公務員ですら4割は赤字。2割は明らかに「生活が苦しい」と回答しています。
「2,000万円あれば大丈夫、という慢心があったのは確か。今もその半分程度は残っているので、恵まれています。でも、この物価上昇がいつまで続くのか本当に不安になります。老後が10年、20年と続く可能性もある。そうなるとお金が足りるのかどうか……」
佐々木さんが最近後悔していることは、安易に貯金に頼ったこと。定年後に資産運用なんて意味がないと思っていましたが、物価高で生活負担が増大する今では、「できる範囲で殖やすことに目を向けていればよかった」といいます。退職後の生活設計において、安易に貯金に頼ることがいかにリスクを伴うか、改めて感じているというのです。
厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、年金受給者のうち「年金が収入の100%」が41.7%、「80~100%」が17.9%で、合わせると6割弱にもなります。それだけ年金への依存が高いことを意味しています。
年金月18万円でも、貯金を取り崩さないといけないという現実。平均的な元・国家公務員であっても物価高の波に翻弄されています。これから来る未来でも、予期せぬ変化に満ちているでしょう。今一度、自身の老後設計を見つめ直し、変化に対応できる備えの必要性を考えるべきだといえそうです。
[参考資料]
人事院『令和5年 退職公務員生活状況調査』
厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』