女性の場合、結婚後は夫の扶養内で働く、専業主婦になるといった選択をする人が多く見受けられます。しかし、高齢になって年金生活を送るようになった際に、年金収入が少なく、生活が苦しいと訴えるケースも少なくありません。高齢になると体も思うように動かなくなり、若いときのような収入を得ることもできなくなります。本記事では、中村さん(仮名)の事例とともに、老後に収入を増やす方法について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
福祉センターの能面担当者「生活保護の財源、知っていますか?」…〈年金7万円〉最低賃金時給1,020円の仕事を失い、駆け込んだ68歳女性「冷酷すぎるひと言」に脱力【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護の受給条件

生活保護は、厚生労働省が定める最低生活費を下回る場合に受給できます。地域によって1級地ー1から3級地ー2まで、6つにわけられています。澄江さんが暮らす3級地ー1の最低生活費は、6万7,350円です(生活扶助基準第1類3万8,560円+第2類2万7,790円+特別加算1,000円)。澄江さんは老齢基礎年金と厚生年金を合わせて月6万9,000円を受け取っているため、基準をわずかに上回り生活保護の対象外となりました。加えて実家を所有している点も、申請が通らなかった要因といえます。

 

総務省が調査している家計調査の家計収支編では、65歳以上の単身世帯の女性の令和6年の消費支出額は15万5,923円となっています。住居費が不要でも、食費や光熱費などの高騰で年金額以上の支出となっているのが現状です。以前は年金額も物価に連動して増減していました。ところが現在は、年金加入者数や長寿化を加味した調整率を乗じて計算するマクロ経済スライドのなか、年金額が増加したとしても実質的に目減りしており、生活の圧迫感は増す一方です。

老後に自宅を活用する・収入を増やす方法

アルバイトの収入がなくなり、生活費が年金収入だけとなった澄江さん。澄江さんは両親から実家を相続していますが、子どもがいないため将来的な処分も視野に入れる必要があります。収入を増やすことに加えて、自宅を活用する選択肢も浮かび上がってきました。資産活用と収入増の両面から、次のような手段が考えられます。

 

リバースモゲージ

自宅を担保に借り入れ、利息のみ返済し、契約者が亡くなったあとに売却して元本を返済する仕組みです。

 

リースバック

自宅を売却したうえで買主と賃貸契約を結び、家賃を払いながら住み続ける方法です。固定資産税は不要になりますが、築年数や立地により売却額が低くなる可能性があります。

 

シルバー人材センター

収入を増やす方法としては、就労面では、一般企業が難しい場合にシルバー人材センターを活用する方法もあります。60歳以上で趣旨に賛同し、会費を納めれば会員になれる制度で、月10日以内・週20時間以内(特定業務は週40時間以内)の就業が可能です。

※特定業務では、都道府県知事が指定した場合に、シルバー人材センターが派遣と職業紹介で業務を行う。

 

業務内容も技術分野・技能分野・事務分野・管理分野・折衝外交分野・一般作業分野・サービス分野と多方面の仕事がありますが、希望の分野の仕事を紹介してもらえるかは保証されていません。今回の澄江さんのケースでは、今後大きく収入を増やすことが難しいことを考えて、最終的に自宅をリースバック契約し、シルバー人材センターで月5万円弱の収入を得る道を選びました。

 

老後2,000万円問題と騒がれた時期がありますが、これからの老後は年金だけで生活していくことが難しい時代。現役時代から安心できる資金計画を立てておくことが重要です。

 

〈参考〉

※1 厚生労働省:生活保護制度
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

※2 総務省統計局:家計調査(家計収支編)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20240&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330022&tclass3=000000330023&result_back=1&tclass4val=0

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表