
収入が平均以上の世帯であっても、不安定な老後生活
別府義男さん(仮名/享年76)は、ごくごく一般的な家庭を築いていました。妻の幸子さん(仮名)は3歳年下で、結婚後は所得税の非課税の範囲で、パート勤務。子どもたちが独立したあとはパートをやめ、専業主婦として趣味の習い事をしながら生活をしていました。子どもたちは、48歳の長男・彰さん(仮名)と46歳の長女・純子さん(仮名)の2人。東京でそれぞれすでに家庭を持ち、暮らしています。
義男さんは、60歳で定年退職をし、63歳まで再雇用という形で働きました。65歳からの年金額は、妻の幸子さんと合わせて月に28万円。内訳は、義男さんの老齢基礎年金6万8,000円と老齢厚生年金の17万円と妻の老齢基礎年金の4万2,000円となっています。幸子さんの年金が少ないのには理由があります。義男さんと結婚後、会社員の妻となった幸子さんは、国民年金の任意加入はせず、61年から第3号被保険者となったことで、老齢基礎年金の額が少ないのです。
夫が亡くなり、妻は窮地
義男さんがある寒い冬の朝に突然倒れ、そのまま意識を戻すこともなく他界しました。それまでは、年金月額28万円を受け取っていました。贅沢はできないものの、人並みの生活を送ることはできていたようですが、義男さんが亡くなってからの年金額は、16万円弱に。助けを求め、長男の彰さんに電話をしました。
母親の幸子さんは「貯蓄が底を尽いてしまったの。明日からの生活が不安だから、生活費を送ってほしい」と涙ながらに訴えます。