高齢者の住まいとして定着しつつある「老人ホーム」。さまざまなタイプの施設があるので、しっかりと見学し、自身にしっかりと合っているか、見極めることが大切です。しかし、どうしても見学ではわからないことがあり、入居後に「こんなはずではなかった」ということも珍しいことではありません。
う、嘘だろ…年金月20万円・88歳の父が「高級老人ホーム」から大脱走も、3キロ先のスーパー前で確保。まさかの「逃走理由」に家族全員が唖然 (※写真はイメージです/PIXTA)

父にぴったりと家族も太鼓判を押す「高級老人ホーム」だったが

田中実さん(仮名・88歳)。卒寿を控えていますが、病気知らず、病院いらずの健康体。元気の秘訣を聞くと、「ひとり暮らしだから、すべて自分でやらないといけない。掃除に洗濯に料理に……体を動かすことが一番だよ」と笑っていた田中さん。

 

しかし、ある日、腰を痛めて動くのも困難になったとき、たまらず長女を呼びつけました。このことがきかっけとなり、「元気とはいえ、88歳のひとり暮らしはどうなんだ」という議論が家族を巻き込んで噴出。「バカにするな、俺はひとりでもやっていける」と実さんはいうものの、腰を痛めてベッドに横たわる姿では説得力がありません。結局、家族の説得に折れる形で、老人ホームへの入居を決めました。

 

入居を決めたのは、入居一時金1,500万円、月額費用25万円と、いわゆる高級老人ホームといわれる施設。年金が月20万円だという田中さん。月額費用の不足分は、貯蓄を取り崩して対応していきますが、派手な生活を好まない田中さんは、現役時代に老後を見据えて進めてきた貯金にほとんど手を付けておらず、費用懸念は一切なし。また家族も安心の医療・介護体制が、決め手のひとつになりました。

 

郊外にあり、自然豊かな環境。食事の美味しさに定評があり、毎月の特別メニューはホテルシェフの監修と力の入れよう。介護を必要としない自立の人も入居でき、レクリエーションも豊富。将棋を指すのが趣味だという田中さんにぴったりの施設です。

 

「父にはできるだけ快適な生活を送ってほしかった」

 

そんな子どもたち全員が太鼓判。「思っていた以上に快適。毎日楽しく暮らしているよ」と連絡をくれる田中さんに安心をしていました。ところが、ある日突然、施設から連絡が入ります。

 

「実さんが外出届を出さずに施設を離れ、戻ってきていません」