
安住の地のはずが、突然の退去要請
大野節子さん(仮名・78歳)。最近は足腰の衰えが顕著で、ひとり暮らしに不安を覚えるようになりました。また同じようなタイミングで、住んでいたアパートの建て替えが決まり、次の住まいを決めなければいけなくなったのです。
「こんな年寄りに、部屋なんて貸してくれないだろう」
そこで検討し始めたのが老人ホームへの入居です。医療・介護体制が整っていれば、この先、万一のことがあっても安心――しかし懸念は費用。
「私なんかが入ることができる施設なんて、あるのかしら」
老人ホーム入居の際に考えるべき費用は、まず入居一時金。家賃の前払いみたいなもので、「入居一時金なし」から数千万円、なかには億を超えるなど、施設によってまちまち。そして月額費用。介護サービスの自己負担分や居住費、食費、管理費などが含まれますが、何が費用に含まれているかは施設によって変わります。
【入居一時金はいくら?】
なし…25.4%
50万円未満…17.2%
50万~200万円未満…17.0%
200万~400万円未満…14.0%
400万~600万円未満…9.3%
600万円以上…9.9%
※わからない…7.2%
【月額費用はいくら?】
10万円未満…9.9%
20万円未満…33.6%
30万円未満…27.3%
40万円未満…13.6%
50万円未満…5.1%
50万円以上…3.6%
※わからない…6.8%
出所:株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護/『介護施設入居実態調査 2025(お金編)』
大野さんが入居を決めたのは「入居一時金なし」「月額利用料約16万円」という介護付き有料老人ホーム。年金月17万円だという大野さんが「ギリギリ、この費用であれば」と判断した施設です。初めは同年代の人たちとの共同生活に不安を抱えていたといいますが、スタッフは親切で、入居者との交流も楽しいものでした。億劫な家事の必要もなく、ひとり暮らしのときに抱えていた不安とも無縁。
「こんなことなら、もっと早く入居したかったわ」
しかし、入居からわずか6ヵ月、施設の事務局から「今の料金での運営継続が困難になった」との説明とともに、突然の通告が届きました。