子どもの教育費の目途が立ったら、将来を見据えた資産形成を本格化させる――そんな想定のもと、家計を運営している人は多いでしょう。しかし、何でも想定通りにいくとは限りません。生活設計の見直しを迫られることも珍しくはないのです。
信じられない…月収45万円・52歳の地方公務員、絶句。〈長男・大学留年〉〈次男・大学浪人〉、まさかの連鎖で老後崩壊の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

次男に続き長男も…迫られる生活設計の見直し

ある日、東京の私立大学に通っていた大学3年生の長男から、一本の電話。あまりの衝撃的な内容に、西川さんは言葉をなくしたといいます。

 

「留年が決まった……」

 

単位不足で留年が確定。1年分の学費約150万円が追加で必要になりました。また留年に伴い、卒業が1年遅れることで就職も先延ばしに。仕送りも1年分余計にかかり、教育費負担からの解放はさらに遠のくことになったのです。

 

兄弟そろって進路に苦戦し、教育費の負担が増した西川さん。文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、幼稚園から高校まですべて公立だった場合の学習費は総額596万円。小中高は公立だと647万円、小中は公立だと776万円かかります。そこに上乗せされるのが大学の学費。国公立であれば4年間で240万円程度ですが、私立大学であれば400万~500万円程度。さらに下宿生であれば毎月の仕送りがプラスされます。

 

西川さんの場合、そこに次男の浪人、長男の留年による費用も加算され、家計をさらに圧迫することに。「子どもたちの夢を支えてあげたい」という思いは当然の親心ですが、一方で、教育費の増加は長期的な資産形成に大きな影響を及ぼします。

 

「今は教育費優先で、貯蓄に回す余裕がなくて。将来のことを考えると、少しでもお金を貯めていきたいところなんですが……」

 

今が教育費負担のピーク。これからは徐々に負担は軽くなり、資産形成を加速させることができるはず――そんな目論見でしたが、子どもたちの「まさかの連鎖」により、一層不透明に。「どんなに綿密に計画を立てても、想定外のことが連続したら、あっという間に老後は破綻してしまうんでしょうね」と西川さん。

 

総務省『家計調査 家計収支編(2024年平均)』によると、65歳以上の高齢者夫婦(無職)の1ヵ月の収支は3万4,058円の赤字。1年で40万円、10年で400万円、20年で800万円――不足分を補うために、現役時代のうちにある程度の貯蓄がなければならないのは明白です。

 

教育費負担が家計を圧迫――こうした事態は、決して西川さんだけのケースではありません。内閣府『少子化社会対策白書』などでも、若者の進学率は上昇している一方で、家庭の教育費負担が重くなり、特に中間所得層の家計圧迫が深刻化していると指摘されています。

 

長男は大学を留年、次男は大学を浪人――想定外の事態で、生活設計の見通しが崩れた西川さん。一時は「私の育て方が間違えていたのか」などと落ち込んでいたといいますが、今は、引き続き、子どもたちの意志を尊重しつつ、老後に向けた対策の立て直しを進めているといいます。

 

[参考資料]

。文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』

内閣府『少子化社会対策白書』

総務省『家計調査 家計収支編(2024年平均)』