近年「令和の米騒動」とも呼ばれる米不足が社会問題化しています。背景には、長年続いた減反政策や気候変動、高齢化による供給力の低下に加え、人口減少とインバウンド需要による需要の構造変化、そして在庫管理の不備が複雑に絡み合っています。本稿ではニッセイ基礎研究所の小前田大介氏が、米の安定供給を脅かす要因を〈供給〉〈需要〉〈在庫〉の3つの視点から多角的に分析し、今後の政策課題について詳しく分析、解説します。
令和の米騒動が起きた背景と農業の現状~米の価格高騰はなぜ起きた?~ (写真はイメージです/PIXTA)

気候変動の影響も…暑さに弱い「コシヒカリ」の課題

異常気象や気候変動は、米の安定的な生産に大きな影響を与えている。特に予測困難な台風や豪雨は、発生の度に農業環境を大きく破壊するだろう。

 

日本で主に作付けされている「コシヒカリ」は寒さには強い一方、暑さに弱い品種であるため、猛暑による品質低下が問題である(図表2)。

 

資料:米穀安定供給確保支援機構「令和5年産水稲の品種別作付動向」・高温耐性は各種研究結果をもとにニッセイ基礎研作成
[図表2]令和5年産うるち米の品種別作付割合上位10品種 資料:米穀安定供給確保支援機構「令和5年産水稲の品種別作付動向」・高温耐性は各種研究結果をもとにニッセイ基礎研作成

 

特に2023年は記録的な猛暑の影響により収穫量が減少し、品質の確保が困難であった。特に東日本を中心に1等級米(等級の数字が小さい程、精米後に残る米の量が多い)が対前年で収穫割合が減少した(図表3)。

 

資料:農林水産省「米穀の農産物検査結果」をもとにニッセイ基礎研作成
[図表3]令和5年度産米の1等比率(対前年増減) 資料:農林水産省「米穀の農産物検査結果」をもとにニッセイ基礎研作成