「老後は家賃の心配がない持ち家が安心」――そんな考えから、退職後にマイホーム購入を決断する人は少なくありません。しかし、住まいにかかる負担は「買って終わり」ではないのが現実です。見落とされがちなコストと、その先にある思わぬ落とし穴が、高齢世代の生活を揺るがしています。
バカでした…「年金月18万円」・「退職金2,400万円」66歳男性、老後を見据えて3,000万円のマンション購入。賃貸暮らし脱却も「私の選択は間違えていたのでしょうか」と後悔のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

65歳男性がマイホーム購入後に感じた後悔

山本誠さん(仮名・66歳)は、65歳で再雇用含めて40年以上勤めた会社を退職。人生初のマイホームを手に入れました。 それまで40年以上、民間賃貸住宅で暮らしてきた山本さんにとって、住まいの購入は長年の夢でもあり、「老後の安心のための最後の大きな決断」だったと語ります。

 

65歳を迎え、月18万円の年金収入。そして60歳の定年時に受け取った退職金2,400万円含めて、貯金4,000万円。この範囲で慎重に予算を組み、都内近郊の中古マンション(築20年・3,000万円)を一括購入しました。老後は賃貸ではなく、家賃不要の持ち家が安心と考えたためです。

 

マンションは駅から徒歩10分圏内。周辺に医療施設やスーパーも揃っており、高齢男性の一人暮らしには申し分のない環境でした。 老後に収入が限られるからこそ、固定費を抑える意味でも「買っておいたほうが得」と思った山本さん。老後の住まいとして、堅実な選択に思えました。しかし、生活が始まって1年が経ち、当初思い描いていた安定した暮らしとは異なる現実が見えてきます。

 

マンション購入後、地味に負担に思えたのが毎月の管理費と修繕積立金でした。購入時点ではあわせて月2万円程度。賃貸マンションで暮らしていたときの家賃、月12万円と比べるとはるかに少ない金額であり、毎月、管理費や修繕費があることは承知の上。ただ固定費をできるだけ削るという狙いでマンションを購入したためか、現実を前に、「やっぱり意外とかかるなあ。戸建てにしたらよかったのか――」とふと頭をよぎったそうです。

 

さらに購入から1年経ったころ、管理費と修繕積立金は合計4万円に引き上げ。この物価高のなか、苦渋の決断だといいます。しかしこの物価高はいつまで続くかわからず、管理費と修繕積立金のさらなる値上げの可能性は高いようです。