うちの親は大丈夫だろう――子にとって親はいつまでも親。しっかり者で、頼りがいがある。しかし、確実に年を重ねていっている高齢の親は、想像もつかない事態に直面し、窮地に瀕していることも。そのことを知ったとき、「親の老い」を認識するのかもしれません。
GWで実家に帰省したら凍り付いた…年金月15万円・82歳母の預金通帳をチラ見した52歳長男、「1,000万円の引き出し」に不信感。理由を聞いて唖然「うっ、うそだろ?」

どうして貯金がゼロに? 母の生活が破綻寸前なワケ

最初は「最近は値上げ、値上げで生活が結構大変なんだよ」という洋子さん。確かに、いつまで続くかわからない物価高に、智さん自身も辟易することはしばしば。だからといって、短期間のうちに1,000万円を引き出す理由にはなっていません。さらに問い詰める智さん。それで堪忍したのか、洋子さんは重い口を開きます。

 

「実は投資に失敗して――」

 

何とも衝撃的な告白。知り合い(だった人)から「特別な投資商品」に関する勧誘を受け、信用してしまい、結局は大きな損失を被っていたのです。損失を補うために、父の形見でもあった骨とう品をすべて売却。損失の穴埋めを行ったといいます。智さんは詐欺を疑いましたが、「詐欺ではない」と洋子さん。

 

「お子さんやお孫さんに財産を残してあげましょうよと誘われて、つい、大金を……」

 

高齢者が金融商品に関する情報に疎いことはよくあること。また退職後は収入源が限られるため、目先の儲け話に魅力を感じてしまうこともあるようです。さらに「お子さんのため」「お孫さんのため」というマジックワードに、思わずお金を出してしまう――高齢者あるあるといえるでしょう。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2023年)』によると、「金融資産ゼロ」という家庭は24.7%・4世帯に1世帯の割合で、将来への備えはなしでその日暮らしのような状況。また「金融資産あり」という家庭の資産保有額は平均で1,758万円ですが、中央値で715万円、「資産ありでも100万円未満」が、資産あり世帯の11.5%にもなります。

 

*定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のため、または 将来に備えて蓄えている部分

 

大変な状況であるにも関わらず、何もいわなかったのかと咎めると、「絶対怒られると思った」と洋子さん。その言葉に何も言い返せなくなる智さん。

 

「大丈夫。まだこの家があるから。本当にダメになったら、この家を売るわ」

 

しっかりものだと思っていた母が、いつの間にか“大きな失敗”をしていたことに「うっ、うそだろ!?」とショックを隠し切れない智さん。自身と家族のことだけで精いっぱいで、高齢の母のことをあまり気に留めてこなかったことを深く反省しました。あれから1年。以前よりも密に連絡をするようになり、帰省の頻度も多くなったといいます。

 

[参考資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](2023年)』