備えがあれば、老後は穏やかに過ごせる――そう信じている人は少なくないでしょう。しかし、どれほど綿密に準備を重ねても、想定外の出来事は起きるもの。順調なはずだった退職後の生活に、ある日突きつけられた現実とは?
泣きました…「退職金2,200万円」でも「時給1,280円」のアルバイトを続ける65歳男性、携帯電話が止まり、電気もない「孤独な老後」 (※写真はイメージです/PIXTA)

おひとり様男性、老後はどう生きていくか?

各々の滞納分を支払い、生活を立て直すのに数ヵ月かかりました。まずアルバイトでの収入がある間は受け取りをやめておこうと考えていた年金の受給を開始。受取額は月19万円。これで生活にだいぶ余裕が生まれました。

 

「一度崩れると、生活を立て直すのって結構大変ですね」

 

それにしても、派手な生活でもない松下さん、資産形成をしてこなかったのでしょうか。実は松下さん、40代で離婚を経験。2人の子どもがおり、元妻が引き取る形になりました。 「せめて子どもたちには不自由させたくない」と考え、毎月の養育費に加え、元妻と子どもたちが住み続けるために、家のローンの支払いも続けました。

 

さらに自身は賃貸マンションの家賃もあり、自分のための貯蓄には手が回りませんでした。月々の出費は常にギリギリ。教育資金や突発的な支出に消えていき、老後資金を積み立てる余裕はなかったのです。

 

退職金はどうしたのでしょう? 実は財産分与により、4分の1は元妻へ。さらに住宅ローンの支払いなどで使い、残ったお金は定期預金に回してしまったとか。公共料金の滞納が判明したとき解約という手もありましたが、「満期までは――」という思いが強く二の足を踏んだとか。

 

いずれにせよ、スタートでつまづいたセカンドライフを安定してきたという松下さん。

 

「もう少し、自分の老後のために働こうかなと考えています」

 

今、思い悩んでいるのは家賃。「もう少し、家賃の安いところに引っ越したい」と住み替えを考えていますが、今後のことを考えると、老人ホームへの入居というのもひとつの選択肢だと考えています。

 

「子どもたちも、それぞれ家族をもつようになるでしょう。そうしたら、私のことなんてかまっていられなくなる。自分ひとりでも何とかなるようにと考えると、元気なうちに施設に入るのもいいかなと考えているところです」

 

[参考資料]

総務省『家計調査年報 家計収支編 2023年』