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仕事を辞めたら全国を旅しよう…夫婦で語り合っていたが
退職後の生活設計をしている多くの人々にとって、安定した年金と退職金は安心材料となります。佐藤修二さん(仮名・68歳)もその1人でした。
大学を卒業してから勤めていた会社は、60歳で定年を迎え、再雇用制度を利用して65歳まで働きました。定年時に受け取った退職金は2,500万円、60歳以降も月28万円ほどの月収があったため、手つかずで残っています。さらに5年間厚生年金に加入したことで、65歳から受け取る年金は年8.4万円ほど増えて、月19万円程度を受給。妻の年金と合わせると30万円を超えます。
とにかくリスクを避けることをモットーにコツコツと進めてきた貯金も2,000万円を超え、住宅ローンも完済済み。お金の不安などない、穏やかな老後を過ごせると考えていました。
「仕事を辞めたら、全国、色々なところを旅行しようと妻と話していました。二人とも食べることが好きなので、地方ごとの特産品を食べ尽くそうと盛り上がっていました」
しかし、定年から3年、夫婦の夢は今のところ叶えられていないといいます。
佐藤さんは、かつてのサラリーマン時代、長時間のデスクワークと不規則な食生活が影響し、身長は170cm、体重は90kg超。運動不足と仕事の忙しさから、健康診断で毎年のように生活改善の警告を受けながらも、実行に移すのが難しい生活を送っていました。しかし、45歳を過ぎたころ、本格的に健康に気を使い始め食事管理や適度な運動を意識するようになりました。退職後も散歩を日課にするなど、医師のアドバイスを実践してきました。
「生活習慣を改善してきたつもりでも、なかなか数字には表れなくて――」
退職金2,500万円、年金夫婦で月30万円、これだけあれば夫婦で楽しい老後が過ごせると思っていましたが、退職して数ヵ月経ったある日、健康診断で数値が急激に悪化していることが判明。担当医からは「本格的な治療を始めなければ、今後の生活に支障をきたす恐れがある」と警告を受けます。
血糖値と血圧が急上昇し、糖尿病の合併症も疑われる状態に。再度、薬の処方と定期的な通院が必要となり、その費用が積み重なり始めました。月々の通院費用、薬代、さらには追加の検査費用が生活費を圧迫するようになります。「まさか、老後にこんなことになるなんて」と、佐藤さんは頭を抱えます。
しかし、健康問題はこれだけでは終わりませんでした。退職後も外出を楽しみにしていた佐藤さんですが、膝の痛みが徐々に強くなり、歩行が困難に。数年前から少しずつ感じていた膝の違和感が悪化し、ついには歩くことすら困難に。それに伴って、日常生活にも支障をきたし始めたのです。