定年まであとわずかとなり、長年の勤労の対価である退職金を受け取り、思い描いた第二の人生へ踏み出す――。多くの人がそう願う未来は、本当に確約されているのでしょうか。
定年間近の大惨事…〈月収45万円〉59歳サラリーマン、60歳誕生日まで指折りで数えていたが、まさか〈退職金ゼロ〉。「夫婦でハワイ旅行」も夢の彼方へ「私、何か悪いことしましたか?」 (※写真はイメージです/PIXTA)

第2の人生の現実と、老後に向けた備え

59歳という年齢は、再就職をするにも厳しいタイミングです。ハローワークで紹介される求人は、清掃や警備など、定年後の再雇用を前提とした非正規雇用が中心。これまでのキャリアや収入水準に見合う仕事は多くはありません。佐々木さん自身、「この歳で月収45万円に見合う職場を探すのは難しいと感じました」と語ります。

 

生活費は年金の支給開始までの数年が特に厳しい時期になります。年金受給までの空白期間に、いかに蓄えを維持できるかが重要な分かれ道になるといえるでしょう。

 

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、50代世帯において「老後に対する不安がある」と答えた人は82.3%。その理由の圧倒的トップは「十分な金融資産がないから」で70.5%でした。一方で「不安はない」という人の理由のトップは「年金や保険があるから」で45.9%。「十分な金融資産があるから」39.8%に続き、「退職一時金があるから」が25.4%。老後不安がないという人の4人に1人は、老後の安心は退職金頼みといえるでしょう。

 

「定年後に旅行」や「悠々自適な生活」は、多くの人にとって夢であり続けていますが、その夢を実現するには「退職金」が重要である現実がみえてきました。一方で、あまりに過信しすぎると、佐々木さんのように定年前に計画が頓挫するケースもあるでしょう。

 

老後を見据えた資産形成。万が一退職金がもらえたなかったら――何重にもリスクヘッジしていく必要がありそうです。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』