高齢者の住み替え先として増えている「老人ホーム」。ただその種類はさまざまで、しっかりとその特徴を理解したうえで施設を選ばないと「思っていたのと違う」ということになりかねません。また昨今の介護業界を取り巻く諸問題も、利用者に暗い影を落とします。
今すぐ助けに来て、お願い!午前零時、「年金月15万円」老人ホーム入居の82歳母から緊急電話…すぐに駆けつけた54歳長女が絶句した「まさかの惨状」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「見えない部分」が命を左右する…入居前に確認したいポイント

サ高住には、一般型と介護型の2種類があります。9割が一般型で、自立から軽介護度までの高齢者が居住し、生活支援やリハビリなどの介護サービスには介護保険が適用されません。また2022年の法改正により、入居者の事前承諾を得て条件を満たしていれば、日中のスタッフの常駐が不要となりました。一方、介護型サ高住では、食事の提供や介護、家事、健康管理のいずれかのサービスを提供し、大分類では有料老人ホームに該当。定められた人員基準が必須と設定されています。

 

また国土交通省の資料によると、サ高住における日中の職員数は、入居者50人に対して4人未満が約24%である一方、10人以上であるものが約36%。見守りや生活相談サービスの体制に大きなばらつきが生じているのが現状です。ひと口にサ高住といっても、施設によって状況は異なると考えたほうがいいかもしれません。

 

またサ高住に住み替えた人に対するアンケート調査では、入居後のサービスに関して、過半数が「特に不満はない」と回答する一方で、「職員の数が少ない」が16.2%、「サービスを提供する職員のレベルが低い(経験不足など)」が9.3%などと、人員体制やサービスの内容について不満を口にする入居者も目立ちました。

 

さらに介護業界全体でいわれている「慢性的な人手不足」も影を落としています。

 

こうした状況を踏まえると、施設選びの際には「月額費用」や「立地」だけではなく、「夜間帯の職員体制」や「緊急時の連絡・対応ルール」、「実際の職員数やその定着状況」といった、内見だけでは見えにくい項目についても、家族として確認する姿勢が重要といえるでしょう。

 

和子さんはその後、幸いにも大きなケガはありませんでしたが、直美さんは「今後、母を本当に安心して任せられる場所はどこなのか」と改めて見直しを迫られています。

 

[参考資料]

厚生労働省『社保審-介護給付費分科会 第179回 資料7』

国土交通省『サービス付き高齢者向け住宅の整備等の あり方に関する検討会 とりまとめ 参考資料』