(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸不動産において入居率は物件の収益性に大きく影響するため、不動産投資の観点から注目されている指標です。しかし、具体的な入居率の目安や目標は立地条件等によって変動するため、数値だけに惑わされないよう注意しましょう。本コラムでは、入居率に関する基本的な知識や、入居率の目安のほか、入居率を高める具体的な施策や、入居率が高い物件に共通する特徴を解説します。

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不動産投資での入居率の事前知識

(画像:PIXTA)
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はじめに、入居率に関する基本的な知識を解説します。投資判断や具体的な施策を考えるための前提知識となるため、しっかりと確認しておきましょう。

 

入居率の種類と特徴

入居率とはアパートやマンションなどの賃貸物件において、一棟全体の総戸数に対する入居している戸数の割合を指し、物件の収益性を測る重要な指標のひとつです。

 

入居率の計算方法は以下の通りです。

 

入居率=(入居している戸数÷総戸数)×100

 

例えば、総戸数6戸のうち3戸に入居者がいる場合、入居率は (3戸÷6戸)×100=50%となります。入居率は高いほど収益性に優れている物件といえます。

もっとも、一口に入居率といってもいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴があるため、どの「入居率」を指しているのか注意しなければなりません。

 

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時点入居率は、ある特定の時点における物件の入居状況を示す指標です。測定の基準となる日に空室があればその影響を直接受けるため、一時的な変動が大きいのが特徴です。長期的な収益の安定性を判断するには適していませんが、短期的な収益性を把握するには有効です。また、シンプルな計算式で最も簡易的に入居率を算出できるのが特徴です。

 

稼働入居率は、一定期間の稼働日数における入居率を示す指標です。例えば、1年間のうち何%の期間が満室だったのかを示すため、時点入居率よりも長期的な傾向を分析することができます。年間の稼働率を把握することで、時点入居率と比べより長期的に安定した家賃収入が得られるかどうかを判断しやすくなります。

 

賃料入居率は、満室時に得られる想定賃料収入と、実際の賃料収入を比較する指標です。たとえ部屋が埋まっていても、家賃を値下げして入居者を確保している場合、この指標は低くなります。そのため、単なる入居状況だけでなく、賃料設定の妥当性や空室による損失額を把握するために活用されます。

 

また、想定賃料収入が周辺賃料相場よりも高ければ賃料入居率は低くなりやすく、周辺相場よりも低ければ賃料入居率は高くなりやすくなります。適切な水準で想定賃料収入を設定しなければ賃料入居率の数字があまり意味を持たなくなってしまうため、適切な水準で設定されているかを事前に確認しておくことが重要です。

 

3つの入居率を組み合わせて物件を分析しよう

3種類の入居率は算出の目的がそれぞれ異なるため、不動産投資にあたっては複数の入居率を組み合わせて物件を検討するようにしましょう。

 

例えば、時点入居率が低くても稼働入居率が高ければ、一時的な空室が発生しても長期的には安定していると判断できます。一方で、稼働入居率が高くても賃料入居率が低い場合は、家賃を下げて入居者を確保している可能性があり、収益性の改善が必要かもしれません。

 

このように、3つの入居率をバランスよく分析することで、物件の本当の価値や将来のリスクを把握し、適切な投資判断を行うことができます。単一の指標に頼るのではなく、総合的にデータを読み解く習慣をつけるようにしましょう。

入居率は95%が目安

不動産投資における入居率の目安として、95%前後が一般的な基準とされています。時点入居率は一時的な影響に左右されるため、稼働入居率での95%をひとつの目安と考えましょう。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が賃貸住宅管理会社向けにインターネットで実施したアンケート調査によると、2022年度と2023年度の各1年間での全国平均入居率は以下の通りです。  

 

出典:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会「市場データ(日管協短観)2022年度・2023年度」
出典:公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会「市場データ(日管協短観)2022年度・2023年度」

 

ただし、入居率の目安はエリア特性、物件種別、投資戦略によって大きく異なるため注意が必要です。例えば、人口が増加傾向にある都市部では、単身世帯の割合が増加しており単身者向けの物件が高い入居率を維持しやすい一方で、人口が減少傾向にある地方の物件では入居率が低くなりやすい可能性があります。

 

そのため、入居率の全国平均を参考にしつつも、投資するエリアや物件の特性に応じた目標を設定することが重要です。単に高い入居率を目指すだけではなく、ターゲット層をより明確にし、適切な賃料設定やマーケティング戦略を組み合わせることで、安定した収益を確保できるようにしましょう。

 

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