(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸不動産において入居率は物件の収益性に大きく影響するため、不動産投資の観点から注目されている指標です。しかし、具体的な入居率の目安や目標は立地条件等によって変動するため、数値だけに惑わされないよう注意しましょう。本コラムでは、入居率に関する基本的な知識や、入居率の目安のほか、入居率を高める具体的な施策や、入居率が高い物件に共通する特徴を解説します。

入居率を上げる方法9つ

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ここでは、入居率を向上させるための具体的な施策を9つ紹介します。安定した収益を確保し、投資物件の価値を維持・向上させるためにも、長期的な視点で施策に取り組むことが重要です。

 

ターゲット層に合わせたリフォーム・リノベーション

入居者のニーズに応じたリフォームやリノベーションを行うことは、物件の魅力を高め、空室リスクを軽減する有効な手段となります。

 

リフォームとは、老朽化した物件の機能を回復し、使いやすくするための工事で、リノベーションとは、建物を改修して新しい価値を加える工事になります。

 

例えば学生向けの物件であれば、インターネット環境の整備や家具付きプランの導入が効果的です。一方で、ファミリー層をターゲットとする場合は、収納スペースの充実や防音性の向上が求められます。

 

リフォームの際には、単なる内装の美化だけでなく、ターゲット層のライフスタイルを考慮した設備の導入を意識するようにしましょう。ただし、リフォーム・リノベーションには内容によって高額な費用を要する場合もあるため、計画的に行うようにしましょう。

 

適切な賃料設定

賃料の設定は、入居率に大きな影響を与える要素のひとつです。

 

高すぎる賃料は空室を生む原因となり、低すぎる賃料は収益の低下につながります。周辺の市場相場を調査し、自身の物件の立地や設備の特徴を考慮したうえで、適正な賃料を設定することが大切です。

 

また、入居者獲得のためにフリーレント期間を設定したり、周辺賃料相場を踏まえて契約更新時の賃料見直しを検討したりすることも高い入居率につなげる方法のひとつです。

 

入居者募集の効果的なプロモーション

入居率を上げるために、ターゲット層に適した広告手法を用いて、効果的な入居者募集を行っていきましょう。

 

不動産ポータルサイトへの掲載が基本的な手法となりますが、SNSを活用した情報発信や、地域の不動産会社と連携した紹介制度の導入も効果的です。

 

現在はインターネットで物件を探すことが主流となっているため、内見前に物件の良さを伝えられるよう質の高い写真・動画を用意することも重要です。

 

仲介会社との良好な関係構築

入居者募集をスムーズに進めるためには、信頼できる仲介会社と良好な関係を築くことも大切です。

 

仲介会社は、物件を探している入居希望者とオーナーをつなぐ重要な役割を担っています。そのため、定期的な情報共有や、迅速な対応を心がけるなど、積極的に仲介業者に働きかけるようにしましょう。

 

また、仲介手数料や広告費を適切に設定し、物件の魅力を最大限に伝える資料を用意することで、優先的に紹介してもらえる可能性が高まります。

 

入居者の満足度を高める管理体制

入居率を維持するためには、入居者の満足度を高める管理体制が求められます。物件の管理が行き届いていないと、退去が増えることで結果的に空室率が上がる要因となります。

 

具体的には、迅速なトラブル対応、共用部分の清掃、定期的なメンテナンスを徹底することで、入居者が快適に暮らせる環境を提供するようにしましょう。特に、水漏れや鍵の紛失などの緊急対応が遅れると入居者の不満につながりやすいため、迅速に対応できる賃貸管理会社と契約することが大切です。

 

賃貸管理会社の変更を検討すべきタイミングや、賃貸管理会社の選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】管理会社を変更する際の注意点や手順とは?管理会社の選び方も解説

 

最新設備の導入

入居者のニーズを満たすために、最新設備の導入も検討しましょう。特に、宅配ボックス、インターネット無料設備、防犯カメラなどは、利便性や安全性を向上させ、入居希望者の関心を引きやすい要素となります。

 

ただし、所有する物件の種類によって導入できる設備が異なるため、注意が必要です。例えば一棟マンションや一棟アパートであれば、共用部分に宅配ボックスや防犯カメラを設置することが比較的容易であるものの、区分マンションの場合は管理組合の許可が必要となるため、個別に導入するのは難しい場合があります。

そのため、物件の規模や構造を考慮しながら、導入可能な設備を選定することが重要です。

 

敷金・礼金などの初期費用の見直し

入居者にとって、敷金や礼金などの初期費用は大きな負担となります。そのため、これらの費用を適正に見直すことで、入居検討者のハードルを下げ、空室対策につなげることができます。

 

特に礼金はオーナーの収入にはなりますが、入居者にとっては不要なコストとみなされることが多いため、「礼金無し」に設定することで集客力が高まる可能性があります。また、敷金についても一部免除や分割払いを認めることで、より多くの入居検討者を惹きつけることにつながる可能性はあります。しかしながら、退去時の原状回復費用のリスクが高まるため注意が必要です。

 

初期費用を減らすことでより多くの入居検討者を惹きつけることができる一方、支払い能力の低い入居希望者が集まってくるリスクも高まります。そうしたリスクに対しては、保証会社の活用や賃貸管理会社との間で入居者審査の目線すり合わせなどの対策が必要です。

 

ペット可、DIY可など、入居条件の緩和

近年、「ペットを飼いたい」と希望する入居者が増えており、ペット可物件の需要も高まっています。ただし、ペットによる設備の損傷や騒音トラブルのリスクがあるため、事前にペット飼育のルールを定めたり、通常より敷金を追加したりするなどの対応が求められます。

 

また、DIY可物件も注目されており、入居者が自由にカスタマイズできる環境を提供することで、物件の魅力が増し、長期入居につながるケースもあります。この場合も、原状回復のトラブルを防ぐために改装範囲を明確にし、事前の許可制とするなどのルール設定が必要です。

 

定期的な市場調査と戦略の見直し

不動産市場は常に変化しているため、競合物件の動向や入居者ニーズの変化を定期的に把握することが重要です。そのため、周辺エリアの賃料相場を分析し、物件の家賃が適正かどうかを見直すなど、競争力を維持できるように心がけましょう。

 

また、入居者のニーズも時代とともに変化していきます。インターネット無料設備の導入やテレワーク環境の整備など、最新のトレンドに合わせた対応を行うことで、競争力を高めることができます。

 

安定した入居率を維持するためには、市場調査を定期的に実施し、それに基づいて柔軟に戦略を見直すことが重要です。

 

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