老後、多くの夫婦の生活費は、主に年金収入が軸となるでしょう。しかし、妻が専業主婦や扶養内パートだった夫婦は特に注意が必要です。もし夫が先に亡くなると、年金が大きく減少するリスクがあります。本記事では、別府さん(仮名)の事例とともに、高齢者世帯が現役時代に備えるべきことについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
世帯月収80万円・地獄の48歳“住宅ローン&子の学費”で息も絶え絶えの長男…追い打ちに、父亡きあと年金激減・田舎の73歳母からのSOSで悶絶「ど、どうすれば?」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

現役時代からできること

国民年金の老齢基礎年金は、年金の納付期間に応じて金額は変わりますが、20歳から60歳までの40年全期間納付することで増額させることができます。昭和31年4月1日以前生まれの人の令和7年度における老齢基礎年金の満額は、6万9,108円です。

 

老齢厚生年金は、現役時代の収入によって受給額が増減します。受給額を計算する基は標準報酬月額という、実際に受け取った給与を標準報酬月額表に照らした等級が用いられ、標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間で割った平均標準報酬額で計算されます。

 

標準報酬月額の等級は32等級まであり、上限は65万円。たとえ収入が80万円あったとしても、老齢厚生年金の基準となる収入では65万円となります。現役時代の生活水準が高い場合には、年金に頼る生活になってしまうと収入が大きく減少してしまうことに注意が必要です。

 

今回の別府さんのケースでも、現役時代の収入が多かったことで生活水準が知らず知らずのうちに高くなり、それが当たり前になってしまっていました。

 

年金をもらうようになったらそれなりの生活をしようと思っていても、これまでの習慣を急に変えることは非常に難しいでしょう。結局、貯蓄の取り崩しをして生活水準を落とすことができなくなる人も少なくありません。できればまだ若いうちからライフプランを考えたファイナンシャル・プランニングを行い、将来のキャッシュフローを可視化して、問題点を早期に見つけて対策を打っておきたいものです。


 

〈参考〉

※ 総務省「2024年 家計調査(家計収支編)」

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2024.pdf

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表