人生100年時代。何歳まで生きるかわからないなか、老後資金に不安を感じる人は多いでしょう。一方で、計画的に貯めることができた人にも、新たな悩みが出てくることがあるようで……。本記事ではAさんの事例とともに、資産形成の先に潜む心の葛藤について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説していきます。
老人ホームのために40年も頑張ってきたわけじゃない!…〈年金月15万円〉〈資産1億円〉有り余る資産を抱えた63歳おひとり様女性が突然、嗚咽したワケ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

対照的な妹との確執

よくよく話を聞くと、Aさんが病気に伏せっていた際、見舞いにやってきて10年ぶりに会った妹さんにも原因があるようです。妹さんは美容師という仕事からか、60歳にもかかわらず、おしゃれで明るく40代にも見えるような容姿だったそうです。

 

「若いころから好き勝手して、2回目の結婚なんて親に内緒で年下の男性とできちゃった婚よ。もし、私に万が一のことがあったら財産は全部あの妹に行くのよ! 私だけ損している感じじゃない」とAさんは泣き叫びます。

 

これはちょっと落ち着くまで待ったほうがいいと感じましたので、「体調が完全に戻ったらまたお話ししましょうか」とその場は別れました。

 

Aさんのその後

ときどき、Aさんにはこちらからメールを送っていましたが、1年近く経ったころに連絡が返ってました。再会したAさんは着物姿で髪もアップにして見違えるような姿になっていました。

 

あれから妹さんからは再度連絡があったそうです。なんでも美容師になったときに祖母から譲り受けた着物があるとか。「私にはどうしても似合わなくてタンスの肥やしになったままだったけれど、久しぶりに会った姉さんの姿を見て絶対に似合うと思うから着せてあげる」といわれたそうです。妹のことは嫌いでしたが、祖母の残した着物に興味を持ったAさんは悩んだ末、着せてもらうことにしたそうです。

 

「会っていろいろと話をしてみると、妹も親から離れて暮らしてかなり苦労したことがわかりました。妹から見ると堅実に生きている私のほうが羨ましかった、といっていました。人生いろいろですね。私、いまは着付けを習っていて自分ひとりでも着られるように頑張っているんですよ。着物はいいですね。奥が深いので学んでいて楽しいですし、着ていると背筋も伸びて積極的に外出できるようにもなりました。この年でやっと熱中できるものができた気がします。将来の住まいについてもしっかり考えていきます」と明るく話してくれました。

 

〈参考〉

※株式会社野村総合研究所ニュースリリースより引用

https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/files/000042177.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表