
老後資金は十分でも… 40年の一人暮らし、突然の涙に隠された想い
Aさんはもともと両親と3歳下の妹の4人暮らしでした。両親とも中学校の教師だったせいか、非常に厳格な家庭。母親を尊敬していたAさんは小さいころから「お母さんに似ているね」といわれ、それが嬉しく、両親のいうことをよく聞く物静かな女性として育ちました。
一方、妹は対照的でこのような家庭に反発して高校を卒業したあとには家を出て県外の美容師学校に進み、その後は独立して店を持ち、現在は2人目のご主人と2人のお子さんと暮らしています。
Aさんも30歳までは実家の両親と同居していましたが、結婚を勧める両親や親戚をうるさく感じ、その後は30年以上一人暮らしを続けています。真面目で一人でいることが好きなAさんは「一人暮らしが合っている」といいます。休日もあまり出歩くことがなかったそうです。
「会社には制服もありましたし、洋服やアクセサリーにも興味がなかったので、お金を使うようなこともあまりありませんでした」
短大卒業後は県内の中堅企業の経理事務員として60歳の定年退職まで勤め上げます。その後も雇用延長で仕事を続けていましたが、病気のために仕事を辞めて、一時は引きこもりのようになってしまいました。
そんなころに筆者は老後の相談でAさんと知り合ったのですが、「お金は十分にあるの、でもこれからどうしていいのかわからない」といいます。
筆者は、Aさんが現在賃貸マンションに住んでいることや病気をしたことも考え、将来の老人ホーム住まいについて計画していったほうがいいことを提案しました。
一口に老人ホームといってもいろいろな種類があり、これからも人件費や食費の値上がりで入居の継続も厳しくなる人も出てくるでしょう。さらに、入居費だけで数千万円や数億円という物件もあり、青天井です。自分の住みたい施設を探して事前にしっかり計画を立てておかないと後悔します。
ですが、この話をすると、Aさんは突然泣き出してしまいました。
「私は老人ホームのために40年以上も一人で頑張ってきたわけじゃないわ!」