空き家の活用を阻む要因には、立地や物件の条件といった外的なものに加え、所有者の内面や感情が深く関わっているケースも少なくありません。その“意識”に変化をもたらすには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。本稿ではニッセイ基礎研究所の島田壮一郎氏が、空き家を「語り継がれる場所」へと変えるための手がかりについて詳しく解説します。

空き家が眠り続ける“本当の原因”
空き家の活用を促進するためには、所有者が市場に空き家の情報を提供し、それを仲介者や活用者が適切に活用することが必要である(図表)。ここでは、それぞれの主体および段階における空き家活用を阻害する課題を整理する。
〇所有者
・空き家を活用するためのコストを掛けられない。
・具体的な活用方法が不明確である(イメージできない)。
・需要(利用ニーズ)に対する理解が出来ていない。
・「思い入れ」があるため、手放したくない。
・空き家の活用のために何をすべきか分からない。
〇仲介者
・需要(活用者のニーズ)を把握できていない。
・再建築不可などの条件付き物件の扱い方が分からない。
・自治体と民間の協働の方法が確立されていない。
〇活用者
・空き家を活用する方法が分からない。
・どのような空き家が活用できるかが分からない。
・空き家を活用しようとするプレイヤーが少ない。
このように、空き家活用の促進に向けては、それぞれの立場において様々な課題を有しているが、その中には、流通の仕組みを構築するだけでは解決できず、その主体の意識の変化が必要となる場合もある。具体的には、前述の課題のなかでも、所有者にとって次のようなケースがこれに該当すると思われる。