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繰下げ受給で増額も「返済」に年金の多くが消えてしまう
丸山誠さん(仮名・72歳)。大学卒業とともに一般企業に就職後、30代で脱サラし独立。念願の飲食店を開業し、夢にまで見た一国一城の主となりました。開業後、売上は順調に推移し、2店舗目、3店舗目と複数店舗を展開するまでに至ります。しかし、ここ10年ほどは徐々に売上が低迷し、それに伴い店舗はドミノ倒しのように閉店。2年前に最後の店を閉めることになりました。
自宅は持ち家ですが、住宅ローンが残っており、月々7万円の返済が続いています。さらに、店の設備資金の一部を借り入れていたため、その返済も月5万円。合わせて月12万円の支払いが重くのしかかります。
生活の基盤は公的年金です。誠さんが65歳から受け取っていた場合、基礎年金とサラリーマン時代の厚生年金と合わせて月10.5万円程度でした。それが繰り下げ受給により42%増額となり、月15万円を受け取っています。一方で、同い年の妻・幸子さん(仮名)は65歳になると同時に年金受給を開始し、月10万円ほど受け取っていました。夫婦合わせて月25万円。手取りにすると月21万円ほどです。月々の支払いを済ませると、残り6万円。とても生活することはできません。
老齢年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることができます。1カ月繰り下げれば0.7%増額。最大84%、年金受取額を増やすことが可能です。また、増額率は一生変わりません。
年金が増えても生活費が足りない丸山さん夫婦。そこで廃業後、誠さんが始めたのはコンビニのアルバイトでした。「すぐに始められたのが、たまたま近所のコンビニだった」というのが始めた理由です。貯金は借金の返済に充てたため、ほぼゼロ。すぐにでも働いて収入を得る必要があったのです。現在の時給は1,080円。1日6時間、週5日勤務で、月14万円ほどの給与を得ています。
「手取りにすると月11万円ほど。年金の残りと合わせると月16万、17万円くらいかな。これで何とかやっています」
年金が増えても生活は楽になるどころか、「アルバイトをしないと生きていけない」状況が続いています。