医学部受験の数学の特徴とは?
まず、医学部受験の数学にはどのような特徴があるのでしょうか?
「全般的に問題の量に対して時間が非常に短く、受験生にとっては非常に厳しい問題構成になっています。私立医学部の入試問題自体は、センター試験の時代から共通テストに移行した現在でも大きな変化はありません。しかし、難度はこの10年でかなり上がっております。「限られた時間の中で、いかに効率よく解けるかを見ている」という大学側のメッセージを感じます。
特に計算問題で高い処理能力が要求されようになっていて、確かに一見、計算はすごく大変に見えます。赤本などの解説を見ても、大変な計算をしている印象があり、受験生もそう思いがちです。
しかし、実は工夫して計算することでかなりコンパクトにまとめられるように問題がつくられている印象です。
つまり、非常に大変そうに見えるものの、実は工夫すれば速く正解にたどりつける、というような問題が多い印象を受けます。問題をどれだけ効率よく解けるか、そこに大学側のメッセージが読み取れると感じます。
たとえば、積分の計算でも真正面から全部コツコツとやるのではなく、教科書に載るような公式ではないものの、より速く計算できるようなテクニックは多く存在します。それらを知っているか否か、使えるかどうかということです」
生徒の7割が数学に苦手意識…でも、「好き・嫌い」と成績は関係ない
医学部受験生といえば、みな数学を得意としていると思われがちですが、実は数学に苦手意識を持つ受験生も少なくないといわれます。寺井先生は次のように述べます。
「確かに数学が苦手な生徒はかなり多いと思います。あくまで私個人の肌感覚になりますが、生徒の約7割は数学に苦手意識を持っていると感じます。『数学は嫌いです』と断言する生徒も珍しくありません。
ただ、好きか嫌いか、得意か苦手かというのはあくまでも本人の意識の問題ですから、苦手、好きじゃないといいながらも成績のよい生徒はいますし、その逆もあります。もちろん、好きな生徒のほうが勉強もしますから成績がよい傾向はありますが、好き・嫌いと成績には、正の相関関係があるわけではありません。
そうしたなかで、私が常に話しているのは、数学が苦手でも嫌いでもかまわないということです。嫌いなものを急に好きになるのは難しいですからね。
大事なのは、それでも勉強するということです。嫌いでもいいから、勉強する。まずは量をこなす。たくさん練習すれば、数学の成績は必ず伸びると私は信じています。
好きになる必要はないから、1年間だけ必死に頑張って、医学部合格を勝ち取ろうと常々話しています」
数学ナシで受験できる大学もあるが…
一方で、医学部の中には、数学ナシで受験できる大学もあります。帝京大学医学部の受験科目は3科目で、必須科目の英語と、他に化学、生物、物理、国語から2科目を選べば数学ナシでの受験が可能になります。昭和医科大学医学部は、必須科目として英語と理科2科目の他に、数学と国語のいずれか1科目を選択でき、国語を選択すれば数学ナシで受験できます。数学が苦手な場合、こういった大学を受験するのは戦略として有効なのでしょうか。
「もちろん、そういう戦略もありえます。ただ、数学ナシで受験できる医学部は限定されますから、大学選びの選択肢が非常に狭まります。加えて、数学ナシの医学部には受験生にも人気が高いので、競争率も高くなります。一つのミスが致命傷になりかねません。
また、数学が必須でも、「数学Ⅲ」「数学C(平面上の曲線と複素数平面)」は除外される医学部もあります。その場合も、先ほどの数学ナシの医学部と同様に、競争率が高くなりがちな上、大学によっては全範囲を出題する大学よりも何度が高くなる場合もあります。
したがって、さまざまな受験校に対応できるようにしておくという意味では、数学は勉強したほうがいいですし、できれば数学Ⅲ・Cまでやっておくのが理想です」