さまざまな出題形式がある小論文
医学部の小論文は他学部の小論文と同様に、受験生のものごとに対する考え方やテーマに関する知識を問う大学が多いようです。しかし、他学部との違いは、医師としての適性を見るという役割も持ち合わせている点です。出題形式は大きく分けて以下の4つです。
ただし、選抜要項に小論文試験と記載されていても、実質、学科試験になっている場合や、学科試験ほどの分量でなくても英語・数学・理科等の科目の知識やその応用力を見る出題がなされる場合もあります。その場合は学科試験の対策として取り組んでください。ここでは、オーソドックスな小論文試験の対策についてお伝えします。
①「課題文型」小論文
与えられた課題文を読んで設問に論述するものです。この形式の場合は、まず課題文の主旨を正確に読み取ることが大切です。主旨を取り違えると、大幅に失点することになります。課題文の読み取りが不安な人は、まず課題文を要約する練習から始めましょう。その際は200~300字の字数制限を設けてください。
小論文の場合、200~300字で1段落のまとまりとして文章を書くことが多いため、これくらいの字数の文章をすぐに書けるようにすることも重要です。また、自分が書いた要約は必ず小論文や国語の先生に添削指導を受けてください。取り上げられる課題文は、評論、小説、新聞の社説、エッセイなどさまざまで、課題文が英文ということも少なくありません。
2025年度入試の例で見ると、川崎医科大学(一般選抜)では「木村敏著『からだ・こころ・生命』の抜粋文を読み、本文中の『医師が患者と二人称関係に立つとき、初めて生と死がアクチュアリティを示す』についてあなたの考えを800字以内で述べよ」などが出題されました。
また、課題文が英文の場合は、『Science』、『The New England Journal of Medicine』、『The Lancet』などといった科学雑誌や医学雑誌からの抜粋が多く見られます。
②「図表・グラフ読み取り型」小論文
図表やグラフから読み取った内容を基に自分の意見を述べるものです。 2025年度入試の例で見ると、東北医科薬科大学は「『男女別・年齢別の糖尿病患者数』『男女別・年齢別のBMI値』などのデータを基に、糖尿病患者数の変化の原因を考察し、患者数を減らす方法を述べよ」という出題でした。
この形式の場合も、課題文型と同じく、まず図表やグラフを的確に読み取ることが必要です。その際には、なぜこの図表・グラフを用いたのかという出題者の意図を意識してください。そのうえで、図表やグラフが示している状況になっている背景や原因とその対応策などについて、仮説を立てる必要があります。資料としては、厚生労働省の白書、国立研究所の統計データなどもよく取り上げられます。
③「テーマ型」小論文
「『再生医療の課題と展望について』自分の考えを述べよ」のように、1~数行のテーマだけが与えられている形式です。 2025年度入試の例で見ると、国際医療福祉大学(一般選抜)では、「高齢化が進む中、介護事業の問題解決のための社会的・政策的アプローチは何か。また、それが実現したとき、介護分野および社会全体への影響を述べよ」という内容でした。
この出題例からもわかるように、①②に比べ、入念な対策が必要になります。簡潔なテーマが与えられるだけの出題なので、与えられたテーマに対する知識がなければ「何も書けない……」となってしまいます。したがって、出題されそうなテーマについて見聞を深めたうえで、自分でそのテーマに対する課題提起と、その改善案を書けるようにする必要があります。
④「特殊型」小論文
近年は、①の課題文型が主流となっていますが、他にもさまざまな出題形式がみられ、なかには小論文とは言えないような特殊なタイプの出題もあります。「手紙を書きなさい」、「物語を書きなさい」といったような、相手の立場に立って考えるコミュニケーション能力を探るような小論文や、写真や絵画を見せて、そこから感じ取れることを自由に書かせるものもあります。
2025年度入試での例を挙げると、順天堂大学は「『東京の渋谷で撮影された2匹のネズミの写真』(青雲社「まちのねにすむ」より)を見て、2匹は何を語っていると思うかを述べよ」という出題でした。 また、2023年度の愛知医科大学は、「良寛作の俳句『散る桜 残る桜も 散る桜』を読み、想定される好意的意見と批判的意見を記述し、最後に自分の考えを述べる」といった内容でした。
小論文や面接ではさまざまな課題・質問が出されますが、どちらも解答する際に絶対にぶれてはいけないのは、「自分は将来、医療の現場に立つ」という前提で自分の考えをまとめることです。医学部を受験するということは、基本的にはほぼ全員が医師か研究者になるということ。その自覚と資質を見分ける試験が小論文や面接なのです。どんな問題にも医療に携わる立場で考え、自分の意見を出せるように準備しておくことが大切です。
また、教科・科目の学力を測る学科試験とも言えるような小論文もあり、数学や化学、生物、物理などの知識がないと読み解けないような課題が与えられる小論文もあります。国公立大の後期日程などは、課題が英文で与えられるものも多く、小論文と言いながらさまざまな学力をチェックしているわけです。
このように小論文にはいろいろな出題形式があるので、実際どういった小論文が出題されるのか、志望大学の過去問を研究しておく必要があります。小論文の解答用紙も、縦書き、横書きなどの形式があり、また、誤字・脱字での減点や指定字数の最低90%以上は原稿用紙を埋める必要があるなど、基準もそれぞれ異なるので、事前に調べておきましょう。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括

